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観光行政 ■第2835号《2016年3月5日(土)発行》    
 

日商が観光庁に提言、「国内観光に数値目標を」
田村明比古観光庁長官(左)に提言書を渡し、懇談する日商の須田氏

 日本商工会議所(日商、三村明夫会頭)はこのほど、国の観光施策への提言としてまとめた「今後の観光振興策に関する意見〜『新たな観光ビジョン』策定への期待〜」を公表した。訪日外国人旅行者を全国各地に分散、拡大させる施策を求めるとともに、日本人の国内観光に具体的な目標数値を定め、地域、民間の取り組みを促すように要望している。

 提言は、首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」が観光立国実現への新しい構想を3月末をめどに策定することを踏まえ、全国各地の商工会議所の意見などを盛り込んで作成。内閣官房や観光庁に提出した。

 提言では「観光は地方創生、日本の成長の切り札」を基本に、さらなる増加が見込まれる訪日外国人旅行者の受け入れ態勢の強化、長期的に減少傾向にある日本人の国内観光の活性化などに関する取り組みを求めている。

 インバウンドの施策では、(1)特定都市・地域に集中する訪日外国人旅行者の各地への分散(2)国際情勢などに左右されない多様な訪日外国人旅行者の受け入れ拡大と安定的確保(3)「交流拠点都市」の構築による観光ネットワークの確立—などの必要性を提言した。

 日商が提唱する「交流拠点都市」は、訪日外国人旅行者を全国各地に分散、拡大させるに当たって支点に位置づける地域。交通インフラや観光資源に優れ、周辺地域を含めた観光の支点になる地域の整備を提言している。

 日本人の国内観光の施策では、(1)旅行者ニーズに対応した観光産業の経営革新(2)官民連携による休暇取得キャンペーンなど、観光需要の平準化(3)国による観光関連基礎データの一元的な整備と提供—などを重要視した。

 国内観光は、「インバウンドと車の両輪として取り組むべきであり、まずは長期的な減少傾向を止めることが重要。国内の観光統計を整備し、インバウンドと同様に具体的な数値目標を設定する必要がある」と指摘している。

 提言について日商・観光委員会の須田寛共同委員長は、地方創生を念頭に観光施策の強化の必要性を強調。「観光事業者のほとんどは大都市ではなく、地方にあり、多くは中小企業だ。観光振興は地方の活性化に有効であり、大企業を経由することなくストレートに中小企業に恩恵が行き渡る」と述べ、国に観光を発展させる環境整備などを求めていく考えを示した。


日本人の国内旅行消費額、10〜12月期は9%増の5兆円
 観光庁はこのほど、旅行.観光消費動向調査の2015年10〜12月期の結果(速報値)を発表した。日本人の国内旅行消費額は、5兆3343億円で14年同期に比べて8.9%増加した。14年は消費増税の影響で旅行消費が低迷したことから反動増があると見られる。13年同期と比べると0.4%減でほぼ平年並みだった。ただ、宿泊旅行の1人1回当たりの消費額を示す旅行単価は5万2千円を超え、過去5年の全四半期を通じて最高となった。

 観光庁は10〜12月期の旅行消費額のプラス要因について、消費増税の反動増のほか、北陸新幹線の開業効果の継続、宿泊施設の稼働率向上に伴う料金単価の上昇などを挙げた。旅行単価の上昇要因は、十分に分析できていないという。

 消費額の内訳は、宿泊旅行が14年同期比9.8%増の4兆1276億円、日帰り旅行が同5.7%増の1兆2068億円だった。宿泊旅行を月別に見ると、10月が14年同月比15.6%増の1兆3184億円と2桁の伸びだったほか、11月が同5.1%増の1兆4041億円、12月が同9.7%増の1兆4050億円だった。

 延べ旅行者数は、14年同期比1.8%減の1億5299万人で、過去5年の同じ時期としては最低だった。このうち宿泊旅行は同1.0%増の7819万人だが、過去5年同時期と比較して4番目の実績。日帰り旅行は同4.6%減の7480万人で過去5年同時期と比較して最低だった。

 国内旅行全体の旅行単価は、14年同期比10.9%増の3万4868円だった。宿泊旅行の単価が同8.7%増の5万2792円に上昇し、過去5年の全四半期で最高となった。日帰り旅行は同10.8%増の1万6133円だった。





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