14日夜、熊本県で起きた地震はゴールデンウイーク(GW)を控えた九州の観光業に深刻な打撃を与えている。影響は熊本だけでなく、九州全域に及びそうだ。「早く収まってほしいが、その後の風評被害も心配だ」との声も聞かれる。観光業界の動向を探った。
全旅連は18日、「被災者受け入れの要請が来た場合に対応してほしいと、各都道府県旅組に伝えている」と述べた。熊本県から各都道府県に要請があった場合、各自治体がそれぞれの旅組に受け入れを要請することになっている。また、全国の旅組が被災者をどれだけ受け入れられるか「内部調査中」とも。
熊本県旅組によると、県と旅組との協定により避難所での生活に特別な配慮を要する高齢者や障害者で、自治体を通じて申し込みがある人を対象に、旅組加盟の宿泊施設に受け入れを始めている。18日午前10時現在、65施設1700人分の部屋を確保している。
14日の地震の後、当初100施設以上が受け入れを表明し、約5千人分の部屋を用意。しかし、16日午前1時25分ごろ起きた本震で、受け入れを表明していた熊本市内と阿蘇地方の施設のほとんどが被害を受けて受け入れができなくなり、受け入れ施設数、人数とも激減してしまった。18日現在の受け入れ可能施設のほとんどが熊本市内と阿蘇地方以外に立地しているという。
同旅組の林田祐典事務局長は「被害状況(被災施設数、建物の損傷の状態など)は現在(18日午前10時現在)調査を進めている最中だ。自治体を通じた高齢者や障害者の方たちの受け入れ施設数、人数についても、今後の余震の状況などで変化していくだろう」と述べ、予断を許さない状況が続いていると説明している。
受け入れ施設は、県内の自治体を通じて受け入れを要請された被災者に対し、宿泊場所と食事、入浴施設を当面の間提供する。被災者の自己負担はない。
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国土交通省の19日午前4時現在の集計によると、熊本、大分両県ともに国内ツアー客の被害情報はない。訪日ツアー客では、マレーシアからの旅行者1人が熊本市内のホテルで胸を打撲したが、本人の希望で診察などは受けなかった。
宿泊施設の客では、報告分として、熊本県内で落下物によるけがなど3人。大分県内では負傷の報告はない。また、建物ではガラスや内外壁、配管の破損など、熊本県内で17軒、大分県内で19軒の被害が報告されている。熊本県内の施設3軒は孤立状態にある(客の孤立は解消)。
両県に滞在していた外国人旅行者はバスなどで福岡空港に順次輸送。16、17日には熊本空港から韓国、台湾へ向かう航空便の運休を受け、福岡空港までバスで輸送。16日には大分県が手配したバス6台で別府市、由布市などから韓国人をはじめとする約210人を福岡空港に輸送した。
訪日外国人向け情報提供を強化 観光庁、JNTO
観光庁は外国人旅行者への正確な情報発信を強化している。JNTOの外国語ウェブサイトを通じて、地震の発生情報や交通機関の情報などを提供している。
東京・有楽町にある外国人向け観光案内所、JNTOツーリスト・インフォメーションセンター(TIC)では電話対応を強化。訪日外国人からの電話での問い合わせに対し、午前9時〜午後5時は英語、中国語、韓国語、日本語で、夜間から早朝にかけての午後5時〜翌午前9時は英語、日本語で対応している。
スマートフォンなどで活用できる外国人向けの災害情報発信アプリ「セーフティー・ティップス」の活用も呼びかけている。JNTOの外国語ウェブサイトから無料ダウンロードできる。