民泊問題、旅館は「反対」7割 本紙調査 |
観光経済新聞社はこのほど、全国の主な旅館約100軒を対象に、「民泊」に関するアンケート調査を行った。政府が推進する民泊について、回答者の8割超が“反対”。宿泊者の安全や地域の治安の問題、イコールフッティングの原則に反する既存の旅館・ホテルとの不公平感、安定経営を脅かす商売上の競争激化など、経営者の不安を示す回答が目立った。民泊を容認する条件では、従来の旅館業法に基づく簡易宿所登録を求める声が多く聞かれた。
●民家に観光客などを泊める「民泊」を政府が推進していますが、賛成ですか、反対ですか。
反対が8割超と圧倒的だった。
●その理由を教えてください。
「今現在の違法民泊はあまりにも危険性が高い」「テロリストに使われる」「安全、近隣住民とのトラブル」と、宿泊者や地域住民らの安全面を危惧する声や、「共に旅行者に宿泊というサービスを提供する事業にも関わらず、法的な取り扱いが異なることはダブルスタンダードで看過できない」と、既存の旅館・ホテルとの不公平感を指摘する声が多く聞かれた。
「地方のホテル・旅館の稼働率がまだ50%に達していない所が多い」「民間の宿泊施設の経営を圧迫する」と、既存の旅館・ホテルとの競争激化に危機感を募らせる経営者も多かった。
少数ながら、賛成の意見もあった。「地方での滞在日数が増える。地方をよりよく知って、体験してもらうことができる」「諸外国、特に日本に興味のある台湾等のインバウンド受け入れの効果的な策となる」がその内容。都市部に比べ誘客に苦戦する地方の活性化策の一つとして、民泊を捉えているようだ。
賛成、反対の「どちらとも思わない」とする旅館は「利用者が選ぶものなので」としながらも「ただ、不公平感は若干感じる(旅館は守るべき法令などが多く、費用もかかっているため)」と回答している。
●民泊がご自身の旅館経営に影響を与えると思いますか。
約7割が「与える」と回答した。
「地域の宿泊部屋が急激に増加することになる」「より安易な、安価な宿泊施設を求めるお客さまが多くなる」「適用されるルールが全く違うので勝負にならない」と悲観する声や、「長い目で見ると影響が大きい」「今すぐにでなくても、いずれ料金面で一般の方は比較をするので、影響が出てくると思う」と、将来を不安視する声が多い。
一方、「与えない」とする意見の中では、「地方の温泉のため、現在は影響はありません」「地方旅館である当館への影響は少ないと考える」「温泉地での宿経営なので影響はほとんどないと思うが、都市型、シティホテル等は影響があるのではないか」と、立地条件により影響が異なるとの意見があった。
●民泊を認めるとすれば、どんな条件が必要ですか。
「旅館と同等の規制を課す(消防、保健所、警察関連)」「旅館業法、少なくとも簡易宿所の許可を取ること」「旅館と最低限、同じ条件を適用する。われわれ旅館業は宿泊者の安全を担保するためにさまざまな免許や資格を取得している。それを民泊にも当てはめる」と、既存の旅館・ホテルとの公平性を確保すべきとの意見が圧倒的に多い。
このほか、「宿泊施設が足りていない首都圏のエリアに限定する」「家主が居住していること」「平等な納税が行われること」「地元の同意」「犯罪防止のための責任所在の明確化」などが挙がった。
●その他、民泊についてご自由に意見を。
「どう考えても長期滞在者の方が顧客管理が難しくなるし、ゴミやタバコの吸い殻等の管理も甘くなり、火災等のリスクも増すはずなのに、民泊の方が規制が緩いのはおかしい。今まで、どんな不況時であってもお客さまの安心、安全のために法に従ってきたわれわれ業界の誠意を軽んじているように思えて悔しい」。
「インフラも整わぬまま4千万人達成のためなりふり構わぬ施策は本末転倒」。
「仮設住宅にまだまだ多くの住民が住む中、行政が被災していない民家の改装費の助成をし、民泊を支援しているのは不公平極まりない。経済効果がゼロの民泊を推奨する自治体の施策も理解できない」。
「既存の旅館・ホテルと同条件の規制を望む」。
「ウイークリー賃貸不動産も既に定着しており、外国人運営の施設が急増する前に規制を強化した方が良いと思う。訪日外国人が増えることは良いことだが、無秩序の拡大は日本の文化を損ね、負の連鎖を招きかねない」。
「ホストについては宿泊者の安全対策はもちろんのこと、防犯対策や負うべき義務、その他さまざまな法の順守と規制取り締まりができるようにしないと間違いなく犯罪の温床になる。許可制度は最低限の対策。あとはプラットフォーム業者の責任所在。今のところ何の業法にも引っかからず、納税の義務すら怪しい。ホストとゲストのトラブルに対する責任も多分とらない。せめて、どちらも会員になる時の審査ぐらいしておいてほしいと思うが、多分ザルな状態で、誰でも簡単に登録できるし、問題が起きる要素満載」。
「民泊を推奨してきたパリでは今、民泊を減らす動きが進んでいる。それがなぜか…を考える必要はあると思う」。
「安易な規制緩和の弊害はバス問題で顕著になっている。お客さまの安心安全(地域の人たちをも含めて)をどう確保していくか。もし事故が起こった時の補償、責任は誰が? 不整備な事業体で損保会社は加入を認めてくれるのか」。
「訪日外国人を地方(地域)に拡散させれば、都市のホテル不足は解決する」。
「コスト面だけでなく、どのような人がどのような使い方をするか管理できない怖さがあると思う。近隣への迷惑とか、事故が起きた時の対応等、どうなるのか。責任が問われると思う」。
「現在はまだ一部であるが、このまま放っておけば取り返しのつかない事態になるかと思う。また、事故が起きてからでは遅い。地域住民とコミュニケーションを取りながら長年経営してきた宿と違い、地域住民に悪影響を及ぼす可能性が大きいという点でも民泊には不安な点が多い」。
「体験・食事は民家等に任せ、旅館は宿泊のみを受け入れる」。
「反対の立場だが、もし自分が旅行者で東京や大阪、京都に観光したくホテルを調べて、11平方メートルの小さなシングルルームで1泊2万とかの金額を見たら、民泊を検討するでしょう。いくら需要が供給を上回っているとしても、今のシティホテルの値付けは疑問」。 |
|
「星のや東京」の開業は7月20日 |
|
星野代表 |
星野リゾートは13日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で会見を開き、新規事業の進ちょく状況を報告した。東京・大手町で開業準備を進める旅館「星のや東京」は、開業日を7月20日に決定。北海道旭川市では既存ホテルの運営を来春から始める。
星のや東京は地下鉄大手町駅から徒歩2分のビジネス街に位置する地上17階建ての日本旅館。1階の玄関で靴を脱ぐ純和風スタイルで、2階にフロントとカンファレンスルーム、3〜16階に客室、地下にダイニングルームを設置。最上階の17階は、同地から新たに湧き出た温泉を利用した内湯と露天風呂を設置する。
客室は各階6室ずつの計84室。面積約50平方メートル(定員2人)、同約80平方メートル(同3人)の2タイプ。
客室階に1カ所ずつ、宿泊客専用の「お茶の間ラウンジ」を設ける。スタッフが常駐する24時間のラウンジで、チェックイン時に茶、夜に日本酒、朝におにぎりと味噌汁など、時間帯ごとにさまざまなサービスを行う。「日本的な団らんを楽しんでもらいたい」と、客室にこもらずラウンジと客室を行き来してもらう滞在を提案する。
価格は1泊7万8千円から。
北海道旭川市では、「旭川グランドホテル」(237室)の運営を来春から行う。同社初の都市ホテル運営。「都市観光の需要が大きく存在する。ビジネスホテルの新しいサービスのあり方を追求したい」(星野佳路代表)と、従来の商用客に加え、観光客の取り込みに力を入れる方針を示した。「旭川をトライアルとしたい」(同)と、各地で観光客をターゲットとした都市ホテルの運営を行いたい意向も示した。 |
|
福島県旅組女将会、首相に要望書提出 |
|
安倍首相(中央)と面会した女将会の参加者
(首相の左が若松会長。岩城法相=右から3人目=ら県選出の国会議員も同席した |
福島県旅館ホテル生活衛生同業組合女将会(若松佐代子会長=いわき湯本温泉雨情の宿新つた)は12日、首相官邸で安倍晋三首相に会い、福島第1原発事故による風評被害の払拭などを求める要望書を手渡した。
「福島県における複合災害の現状と観光産業における地方創生について」と題する要望書は、「東日本大震災から5年を迎える今、『ダークツーリズム』ならぬ、『ホープツーリズム』を構築し、県民総出で取り組む時期を迎えている」と捉え、福島創生への事業や活動に対し、長期的な視野に立った支援、援助を求めている。
女将会のピンクの半纏を着た若松会長が代表して首相に渡した。これに対し首相は、訪日外国人観光客の増加について触れ、「福島にももっと来るように、風評被害対策を皆さんと一緒になって頑張っていきたい」と強調した。
官邸を後にした女将会のメンバーは、いわき市出身の岩城光英法相も表敬訪問した。
若松さん以外の参加者は次の通り(敬称略)。
畠ひで子(吉川屋)、渡辺いづみ(山水荘)、片桐栄子(ホテル華の湯)、有賀圭子(五峰荘)、檜沢久子(ゆもとや)、和田美千代(いろりの宿芦名)、山崎捷子(ホテルニューパレス)、星明美(藤龍館)、小井戸文恵(旅館こいと)、大平淑子(割烹旅館天地閣)、佐藤精寿(事務局)。 |
|
宿泊施設活性化機構、創設記念のカンファレンス開催 |
|
宿泊施設活性化機構(東京都港区、伊藤泰斗事務局長)は14日、東京都港区の綱町三井クラブで「創設記念カンファレンス」を開いた=写真。宿泊業を中心に観光関連産業界から約350人が出席した。
同機構は宿泊業界の広報団体として昨年5月に発足した一般財団法人。活動目的に、(1)政官広報=国益につながる観光振興を目的として必要な法整備のための政策提言に寄与すること(2)一般国民広報=当業界業務の面白さを、メディアを通じて国民に伝え、就労意向の向上に寄与すること(3)業界内広報=当業界内におけるナレッジシェアを活発化させ、宿泊施設収益の向上に寄与すること—の三つを掲げている。
基調講演では、観光庁観光産業課の西海重和課長が「官僚の実務責任者からみた『今なぜ観光立国なのか』〜日本政府が考えるインバウンド4千万人達成への道筋〜」、前内閣府副大臣として地方創生、国家戦略特区、クールジャパン戦略などを担当した自民党の平将明衆議院議員が「成長戦略と地方創生と宿泊施設〜観光産業の中核を担うべき宿泊産業に必要な戦略性〜」と題してそれぞれに語った。
アワードも実施。レベニューマネジメントについてのイノベーションを実行したとして「アパホテル」に「第1回レベニューマネジメント賞」が贈られ、アパグループの元谷一志社長が記念講演を行った。また、宿泊施設の未来を最も考え示唆する行動を実施したとして「変なホテル」に、「第1回宿泊施設未来大賞」が贈られ、ハウステンボスの高木潔専務が記念講演を行った。
シンポジウムには同財団の5人の理事が登壇し、リレー形式で講演。宿泊業界へのアドバイスや情報提供を行った。
旅館再生などを手がける際コーポレーションの中島武社長は「料理人は保守的なのではなく、学習をやめてしまっている場合が多い。市場に直接出向かせるなどして料理人の心をよみがえらせる必要がある」と指摘。
貸し会議室からホテル運営まで手掛けるTKPの河野貴輝社長は「インバウンドの流れは、MICEの分野でも大きなチャンス。当社は1種旅行業登録も行っており、さらに事業を拡大したい」と話した。
会員制宿泊施設などを運営するリゾートトラストの伊藤勝康社長は、「ここ10年間で利用客の平均年齢が10歳程度上がり、昨年は70〜75歳になった。人口減少・高齢化社会が叫ばれているが、活動年齢が上がっているので、2030年まで(弊社の)需要は堅調だろう」と述べ、同社の利用者データをもとにした独自予測を披露した。
また、世界的な不動産総合サービス会社、ジョーンズラングラサールの沢柳知彦マネージングディレクターは民泊の問題点を指摘した。旅館業関連規制の本質を(1)宿泊者安全確保(衛生、避難路、スプリンクラー、難燃材)(2)治安(防犯、疫病)(3)用途規制地域(住宅専用地区、文教地区、風致地区は不可)—と解説。
その上で「結果として、立地、容積率、施設構成。消費税、宿泊税、登録免許税、固税などの点において、賃貸住宅が優遇されていることになる。空き家・マンション・アパート貸出型の“民泊”を容認するのであれば、旅館業許可先とのフェアな競争環境の醸造が必要だ」と述べた。
さらに「仲介業者は、賃貸住宅の場合は宅建業者で、宿泊施設の場合は旅行業者になる。ところが賃貸住宅における民泊では、エアビーアンドビーは無規制となっている」と話し、エアビーアンドビーの特異性、違法性を示唆した。
ホテル格付研究所の北岡剛史所長は、独自に行った「ホテル旅館格付け・品質認証ニーズ調査」の結果を発表。「『格付け情報等を重視する』という回答が、リゾートホテルについては66.3%、旅館は68.1%、ビジネスホテルは30.7%、シティホテルは38.6%だった」とした。「インバウンド市場の拡大を考えた場合、宿泊施設に対する格付け情報などが、重要な観光インフラになりうる可能性がある」と強調した。 |
|