全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の北原茂樹会長と日本旅館協会の針谷了会長は4月28日、自民党観光立国調査会(山本幸三会長)に出席し、熊本地震で被害を受けている九州全域の旅館・ホテルの救済に向けた緊急要望を行った。既往貸付の返済猶予や固定資産税の減免、雇用調整助成金の手続き簡素化など11項目。誘客に効果がある「ふるさと旅行券・九州版」の創設や九州キャンペーンの実施要請も求めた。
旅館協会の針谷会長は「九州全域でキャンセルが多発している。私も阪神大震災を経験したが、もう復興できないのではと、非常に落ち込んだ気持ちになった。ぜひご配慮をいただきたい」、全旅連の北原会長は「40万人近い宿泊キャンセルが出ている。対応をお願いするとともに、われわれは被災者の受け入れについても万全を期していることをお伝えしたい」と述べた。
全旅連の調べによると、4月27日時点の九州7県での宿泊キャンセル人員は39万6664人(福岡2万9040人、佐賀6933人、長崎7万人、熊本3万7千人、大分14万6346人、宮崎4万7345人、鹿児島6万人)。長崎県は組合非加盟のハウステンボスなどを含めると10万人を上回るという。
出席した国会議員は「緊急融資は金利を安く、限度額を拡大すること。ふるさと旅行券は地方の単独事業になると思うが、国は特別交付税でしっかりと後押しする必要がある」「来年の修学旅行が心配だ。既にキャンセルが出ている。慎重に判断してもらうよう、文部科学省も含めて働きかける必要がある」「海外で九州に対する渡航の危険情報が出ている。観光庁と外務省はよく連携をして、正確な情報を発信すべきだ」などと述べた。
観光立国調査会の鶴保庸介事務局長は「それぞれの要望にしっかり対応してほしい」と出席した議員に要望した。
観光庁の田村明比古長官は「緊急要望については、熊本、大分両県でかなり着手されている部分もあるが、キャンセルは九州全県に広がっており、今後全県に支援の手が伸びるようにしてまいりたい」と述べた。
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北原、針谷両会長の連名で提出した要望書の内容は次の通り。
平成28年熊本、大分における地震についての緊急要望
この度の地震により、熊本県、大分県を中心に旅館ホテルでも甚大な被害が出ております。また、九州全域にキャンセルが多く発生しており、経営的に大きな打撃となっております。
つきましては、下記について緊急の要望をいたします。
- 九州全域に対し、政府系金融機関の既往貸付について、その返済を猶予するとともに金利を一定期間免除して下さい。
- 九州全域に対し、政府系金融機関の無担保融資を拡大して下さい。
- 民間金融機関に対しても、九州全域を対象とした返済の猶予、緊急融資をするよう政府に対し要請して下さい。
- 社会保険の支払いを免除してもらえるよう関係機関に要請して下さい。
- 固定資産税、事業所税を減免して下さい。
- 水道、下水道、電気、ガス等の公共料金の支払いを猶予して下さい。
- 従業員の雇用を守るべく雇用調整助成金を適用するよう関係機関に要請していただくとともに、手続きについて簡素化して下さい。
- 風評被害が広がらないよう、地域の安全な情報を内外へ発信して下さい。
- 物損の無い地域への修学旅行をキャンセルしないように要請して下さい。
- 「ふるさと旅行券・九州版」を創設して下さい。
- 九州キャンペーンの実施協力を旅行会社や国内内外のオンライントラベルへ要請して下さい。