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 ■観光業界人インタビュー 第2323号≪2005年4月23日(土)発行≫掲載
受け地型で地域活性化
インバウンド事業開始


JTB東北社長
高橋信氏

JTBは06年4月に事業持株会社に移行する。これに伴い全国に10余社の地域別旅行事業会社を設立。現在の各店舗は各社に譲渡、従業員は各社に転籍する。今年4月1日、他地域に1年先がけて地域分社第1号「JTB東北」が営業を開始した。

──新会社の営業戦略は。
「従来から行っている東北からの発地型旅行に加え、『受地型旅行ビジネス』『地域活性化』『事業領域の拡大』に取り組む」

──具体的には。
「イベントを創出して首都圏や東北各県から誘客する。JTBのオリジナルイベント第99回『杜の賑わい』を6月に盛岡で開催する。来年3月には『演歌の夢まつり』を開く。また、『05年上期エースJTB東北キャンペーン』を開始した。JTB旅連東北支部連合会とチラシを共同作成してJTB全社員に配布、東北への送客を呼びかけている。エース35周年記念ツアー『東北夏祭り』では首都圏から新幹線はやて10輌編成の貸切専用列車を2本走らせる。2泊3日で青森、仙台、秋田、盛岡の夏祭りに誘客する。地元商工会議所、地元観光コンベンション協会などの協力も得ながら、祭りなどの行事にも参加する。地域と一体となって行う。こういった取り組みが結果として地域の活性化にもつながる」

──事業領域の拡大とは。
「『インバウンド』と『ネット販売』だ。東北には、福島、仙台、青森、秋田の4つの国際空港があり行政を中心にインバウンドに注力している。ただ、受け皿となるランドオペレーターがいままで存在しなかった。JTBグループにもATC日本旅遊というアジアからのインバウンドを扱う会社があるが、東北には支店がない。私はVJC実行副委員長も務めており、アジアからの受けを中心とする地上手配業務を開始することにした。また、JTB東北独自のHPを立ち上げて、国内向けのWEB販売も展開する」

──インバウンド事業での地元関係機関との連携は。
「たくさんの外国人観光客が東北を訪れているが、客単価が非常に安いのが現状。価格訴求型のオフシーズン旅行が横行している。紅葉の時期など東北のベストシーズンに旅行してもらい、本当の東北を知ってもらいたい。良いものを適正価格で販売し、旅行客、旅館ホテル、エージェントの3者が幸せになる仕組みをつくりたい。これはJTBの使命だ。外国人旅行客は、安さだけを求めているわけではない」

「 第1弾として、8月4日発5日間の東北3大祭りツアーを香港、台湾、韓国で募集開始した。定員は120名。高額だが良出な商品だ。同時にVJC事業として、韓国、中国、香港、台湾、米国からマスコミ、旅行会社など40名を招聘してツアーを行う。8月6日に会津若松で国際シンポジウム・東北伝統芸能イベントを開催して、160名全員に参加してもらう」

──06年4月の完全分社後も国内商品造成部門は、事業持株会社JTBに残る。受地型旅行の商品造成をする上で支障はないか。
「受地型旅行の商品造成は東京で行う。JTB東北は情報発信を担当する。JTB東北が、造成、販売するのは、東北発東北着の域内商品。『忘年会パック』『ノークーポン宿かり名人』など東京で造成できないものに限定される。客室仕入れは全て事業持株会社JTBが行い、共有在庫として管理する」

──JTB7支店、旧ジェイティービー東北21支店が統合してJTB東北になった。現場の社員から戸惑いや不満の声はないか。
「地域分社は、縮小でも分断でもない。各社間の人事交流(異動)も続く。文化の異なる2社の統合に不安を感じた社員もいるようだが、一日も早く解決して新しい文化を築き上げたい」

──地域別分社のモデルケースとなる。成功への意気込みを。
「東北地域における旅行会社の中核として、地域特性を最大限に生かして新たな経営体制を構築し、安定的な利益確保を目指したい。交流文化産業を確立する」

【プロフィール】
たかはし・まこと 昭和40年、JTB入社。会津若松支店、仙台駅旅行センター、郡山支店、八戸支店、団体旅行東北支店、東北営業本部などを経て、いわき支店長、東北営業本部副本部長、東北プロジェクト部長、裏磐梯高原ホテル取締役支配人(出向)、JTB東日本営業本部副本部長を歴任。今年4月に現職。58歳。


【聞き手・江口英一】
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