── 一休を起業した経緯は。 「30歳の時、C型肝炎で入院。起業して自分の人生を試したい、と病床で考えた」 「オークションサイトの米イーベイを分析し、『eオークション』を始めた。99年秋のある晩、西新宿を歩いていると、残業の明かりで一杯の高層ビル郡の中に、電気が消えた窓がたくさんあるビルが目に入った。ホテルだった。『究極の在庫だ』と直感した」 「翌朝、西新宿のシティホテルに飛び込み訪問した。スイートルームなら、オークションに出してもいいと言われた。15万円の部屋が、1万円からスタートして5万円で売れた。空気にしておくより良い、と喜ばれた」 ──高級宿泊予約サイト「一休ドットコム」の開始時期は。 「00年5月にホテルの予約を開始。00年の冬頃から旅館の予約も始めた」 ──契約施設数は。 「05年3月末で、ホテル499軒、旅館200軒の計699軒。旅館は、将来的に300軒位まで増やしたい」 ──8月3日に東証マザーズに上場しました。目的は。 「森商店からの脱却。信頼性を高めて、名実ともに社会の公器になりたいと思った」 ──現在の業績と見込みは。 「04年度は経常利益が7億2千6百万円だった。05年度は12億円の予定。これを社員16人でやっている。社員の平均年収は9百万円」 ── 一休の強みは。 「『高級』特化の安心感と、リピーターの数。現会員93万人の25%が、年収1千万以上。利用率は、年に2~3回」 ──利用者の決済方法は。 「現地で、現金かカード払い」 ──一休が選ぶ「高級旅館」の定義、基準は何か。 「大手旅行社の宿泊プランも研究する。マスコミや周辺旅館からの情報も集める。さらに、実際に宿泊するなどして総合的に判断している。軒数はむやみに増やさない」 ──高級特化が、今後の業績拡大の足かせになるのでは。 「そもそも、無限の成長はない。気にしていない」 ──他サイトなど企業買収の予定は。 「『高級』と『旅行』をキーワードに、現事業と相乗効果の見込める分野への事業拡大はあり得る」 ──手数料(システム利用料)を変更する予定は。 「現行の8%を維持する。企業繁栄の鍵は、信頼関係の継続だ」 ──楽天トラベル、じゃらんネット、ヤフートラベルをどうとらえているか。 「楽トラは、平均単価が7~8千円の出張サイト。じゃらんは、対象が若年層。ヤフーは、JTB商品を売るサイト。皆、フィールドが違う。ユーザー側もサイトを使い分けている」 ──旅行サイトが乱立。海旅サイトでは、タビニなど撤退組も出始めました。 「特色がないと生き残れない。最終ユーザーである利用者、工場にあたる旅館ホテル、双方に支持されないものは時代と共に消えていく。今後も負け組はでてくるだろう」 【プロフィール】 もり・まさぶみ 43歳。86年上智大法学部卒、日本生命入社。ニューヨークのリーマンブラザース投資顧問に2年間出向。C型肝炎で入院。98年日生を退職し、プライムリンク(現・一休)を設立。