──JALグループの組織再編で4月に新生JALセールスが誕生した。何がどう変わったのか。 「JALは6年前にグループ内の販売部門をJALセールスとして分社化した。今回は製販一致を基本に再編した。旅行会社への航空券卸売り機能はJAL本体が担当し、旅行会社への海外企画商品の卸売り機能はJALパックが担当することにした」 ──国内商品は。 「旧JALトラベルに販売機能を集約、新JALセールスとした。もともと旧JALトラベルはJALツアーズのリテーラーだが、独自の企画商品も展開していて国内旅行のノウハウが豊富に蓄積されている。JALトラベルがJALセールスと名前を変え、JALの国内企画商品の販売を各旅行会社にお願いする会社になった。JALツアーズはホールセラーに特化し、販売はJALセールスが担う」 ──自らもリテール販売を続けながら各旅行会社にルートセールスをすることに矛盾はないか。 「各旅行会社にJAL商品を販売していただくことがJALセールスのミッションだ。国際線の座席販売を旅行会社に依存してきた経緯から、JALには流通を大事にする伝統がある。各社と競合するようなことはしない」 ──大手旅行会社へのセールスの状況は。 「旧JALトラベルの顧客の7割は中小旅行会社だった。大手旅行会社へのセールスは4月から始めた。当初戸惑いもあったが、良い関係ができつつある」 ──具体的には。 「大手旅行会社のツアーパンフレット街頭配布のお手伝いなどもしている。営業担当だけでなく総務など内勤者も動員している」 ──JALツアーズは「JALステージ」、JALセールスは「JAL紀行倶楽部」という国内企画旅行商品を持っている。宿泊などの仕入れはどうしているのか。 「数年前からからJALツアーズに一本化している。JALセールスは仕入れ業務をしない」 ──旅館ホテル、観光施設などが加盟している「JALツアーズ会」(会員数780)と「JALセールス施設連盟」(会員数500)は統合しないのか。 「今後の課題だ。JALセールス施設連盟があるおかげで、販売店やお客様の声を直接施設に届けることができているという面もある」 ──ネット販売への取り組み状況は。 「JALツアーズとJALセールスのそれぞれがホームページを持って旅行商品を販売している。JALホームページからもリンクしている」 ──ネット販売は伸びているか。 「急速に伸びているが、旅行会社経由の販売に比べれば微々たるものだ。ただ、JALの国内航空券販売の6割がネット経由になっているという現状を考えると、成長は期待できる」 ──ANAは楽天トラベルと国内ダイナミックパッケージ販売の新会社をつくった。同社にはANAセールスも出資している。JALグループが例えばJTBやヤフーと組んで対抗軸をつくる可能性はあるか。 「そういった戦略はJAL本体が決めることなので分からない。特定のところとだけアライアンスを組むことが正解かどうかも分からない。確かなのはJALグループが流通軽視でないということだ」 ──国内商品販売の他に使命はあるか。 「JALグループ内の営業系人材の確保と育成をやる」 ──具体的には。 「JAL本体の採用数は年間50人程度。これで団塊世代が退職すると営業系の人材がさらに不足する。そこにJALセールスの社員を出向などで供給していきたい。4年ぶりに新卒採用をやった。07年春に30人が入社する」 ──安全問題、内紛、燃油高騰による業績不振などでJALブランドに対する消費者の信頼感が弱まっている。 「特効薬はない。一生懸命頭を下げてセールスをして、失われた信頼を取り戻していきたい。喜んで買っていただける良質な旅行商品を造成、販売していくことに尽きる」 【プロフィール】 かやば・しげろう 慶大経済学部卒。69年日本航空入社。ローマ支店マネージャー、東京支店国際旅客販売部長、広報部長、旧JALセールス執行役員九州支社などを経て、06年4月から新JALセールス代表取締役社長。59歳。