住友商事100%子会社のグローバルトラベルオンライン(GTO)は05年10月、日本初の海外ダイナミックパッケージ販売サイトを開いた。 ──ダイナミックパッケージとは何か。 「要件は4つ。①A都市からB都市へ移動する時、全交通機関が予約できる事②顧客の求める日程や人数に応じて瞬時に価格を提示できる事③予約の受付から決済まで全てがオンライン上で完了する事④料金がダイナミックな事、つまり顧客メリットのある料金を常に提供しつづける事」 ──参入のきっかけは。 「住友商事で鉄鋼関連のeビジネスを手がけた。その後、新規ビジネスとしてダイナミックパッケージの事業化調査を始めた。ワールドトラベルシステム(WTS)が開発したオンライン国際線即時予約システム『スカイレップ』と出会い、04年4月に事業化を決断。自らプログラムを設計して、10月にGTOの基本システムが完成した」 ──当時、旅行業は儲からないという神話があったのでは。 「海外のホテル価格を徹底的に調べた。大手旅行会社のパック用の仕入れ値は世界で一番安いと分かった。同一価格で仕入れてダイナミックパッケージにすれば、大手パックより1割から4割安くできる。ビジネスになると考えた」 ──WTSには04年9月に楽天が2割出資。楽天トラベルも同システムを使って06年2月に海外ダイナミックパッケージを始めた。違いは。 「航空券予約システムは同じだが、航空の仕入れ値はそれぞれ違う。ホテルの仕入れ値も違う。同経路、同航空、同ホテルを双方のサイトに入力してみれば分かるが、旅行代金は違ってくる。GTOの方が安いと思う」 ――なぜ安いのか。 「約90都市、約2000軒のホテルと契約している。半分はランドオペレーター経由だが、半分は直接契約。直接契約で大手と同価格のパッケージ用レートをもらう」 ──なぜ大手旅行会社と同価格での仕入れができたのか。 「アジアでは住友のネームバリューが効いた。欧米では効かないので、各地を周って直談判した。住友家の家訓に『熱心な素人は玄人に勝る』とあり、実践した。サプライヤーが集まる旅行見本市に行けば1日で数十軒のホテルと契約ができる。商社マンの営業経験が役立っている」 ──ダイナミックパッケージはどこが最初に始めたのか。 「英ラストミニットドットコムが最初で、米エクスペディアが追随したと聞いている」 ──そのラストミニットドットコムは9月28日に日本市場から撤退した。敗因は何か。 「近ツと日旅の出資を受け、商品の供給を受けていた。単なる代売サイトだった」 ──エクスペディアが11月から日本でダイナミックパッケージ販売を始める。 「欧米の旅行サイトのホテル仕入れ値は高い。日本市場向けの独自仕入れができるかどうかが鍵だろう」 ──JTBも来春から海外ダイナミックパッケージをやる。 「JTBとはビジネスモデルが違う。GTOはマスの追求よりもニッチの集積を目指している。大手がパック化していない都市で高シェアを狙う。グァムで勝てなくてもヘルシンキなどではGTO側に価格競争力があると思う」 ──社員数と業績の見通しは。 「社員は12人。07年3月期の売上予測は10数億円。5年後に300億から400億円を目指す」 【プロフィール】 ごとう・じゅんいち 40歳。89年慶応大学理工学部卒、住友商事入社。鉄鋼製品の輸出入を担当。鉄鋼第一事業企画室eコマースチーム長代理、金属ITソリューション部課長を経て、05年GTO副社長。