日本旅行の国内新システムが昨年、稼働を始めた。旅館など関係機関が提供した旬の情報を全社で共有し、タイムリーな商品造成や販売に生かせる特長がある。国内旅行の増売は、この新システムをいかに使いこなすかがカギとなりそうだ。菊地憲一国内旅行担当部長に、今年度国内旅行の施策を聞いた。 ──昨年の国内旅行を振り返ると。 「速報値で対前年97・8%と前年にわずかに届かなかった」 「この中で団体は、教育旅行の伸びが寄与して1%の伸び。赤い風船は前年並みとなった」 「 宿泊券類は全体で800億円でクーポン・ノークーポンともに前年を1%下回った。企画(赤い風船)宿泊券は445億円で、赤い風船の販売とリンクして前年並みとなった」 「宿泊券類の伸び悩みは、団体のうち、一般団体が伸びなかったのと、特に10月からの赤い風船の伸び悩みに負うところが多い」 ──システムはどうなったか。 「順調に稼働している。だから提携販売店を中心に、赤い風船を売っていただくために、第1四半期の施策を説明しながら、いま一所懸命営業をかけているところだ」 ──既に07年がスタートしている。 「国内全体で3120億円、前年比102%を目指す」 「赤い風船と団体の施策がもちろん中心となる。赤い風船は「日本旅行ならではの商品展開」が大きなテーマで、数字的には835億円、前年比104%を目指す。団体は727億円で、伸び率は赤風と同じ104%を追いかける」 「宿泊券類は838億円で、やはり4%の伸び」 「日本旅行協定旅館ホテル連盟の方が気になるであろう赤い風船は、新国内系システムの完全活用による販売拡大が一番の課題だ。完全活用とは、システムの特徴を利用した新商品を作ることと、仕入・造成・販売などのデータの一元管理。それによるタイムリーな情報発信。これが2大テーマだ」 「 システムを活用した新商品として、『プレミアムパッケージ』の展開を始めた。これは、宿泊や往復の飛行機、昼食、観光ルートなどが組み合わせ自由のフリープランで、店頭でお客さまの要望を聞きながら、システムの中の素材を入れ込み、パッケージ化するものだ。お客さま一人ひとりのニーズに合った商品を作れる。これは前のシステム(QRシステム)では絶対にできなかったものだ」 「 また、今年は赤い風船35周年ということで、記念商品『食彩×酒彩 出かけようニッポン』を設定した。創業100周年事業のひとつ『新観光素材の開発』とも連動するものだ。『その土地ならではの食と酒』にこだわり、第1弾を1~3月、山口県に設定。四半期ごとに方面を変え、今後は沖縄、北東北、北陸を予定している」 「さらに、今年はJR発足20周年のため、JRのデスティネーションキャンペーンとの連動商品に力を入れる。今年は千葉、岡山、北東北、岐阜を予定しており、これらの商品を強化し、販売拡大する」 「 このほかクローズドマーケットへの対応として、OMCカード会員向けの商品を強化する」 ──データの一元管理については。 「システムを使い、リアルでタイムリーな地域・施設情報を造成や販売現場に発信したいと思う。システムへの情報入力は旅館の皆さまが直接行える。『自館の施設がリニューアルしました』とか、『地域でこんなイベントがあります』とか、そういう情報の入力促進を、各地域の仕入販売センターを通してお願いしているところだ」 「 タイムリーな情報を入れてくれれば、販売店でもお客さまにキメの細かいコンサルティングができる。いままでのRENネット(エクストラネット)に比べ、数倍、情報を細かく入れられる。写真もいままでの3枚程度から、10枚まで入れられるようになった。施設や料理の写真も季節ごとに入れられる。当社の仕入販売センターもお手伝いをするが、ぜひ、自らの“売り”を積極的にアピールしてほしい」 ──新システムには宿泊アンケートの情報も入っているというが。 「お客さまの宿泊アンケートを基にした、施設の評価を掲載している。6段階の総合評価と、お客さまが書いたコメントだ。お褒めの言葉とお叱りの言葉、両方が入力されている。店頭でお客さまに施設の情報を的確に案内できるほか施設の皆さまに評価をフィードバックすることで、品質向上につながる。評価は3カ月ごとの更新で、常に新しい情報を提供する」 ──団体旅行の施策は。 「年間を通しての『ディスカバーウエスト』ほか、四半期ごとに重点方面を設定している。第1四半期は九州。地域ごとにキメ細かい施策を打ち、団体旅行の掘り起こしを図りたい」 「修学旅行は『日本旅行ならではの素材』ということで、適地開発を1年かけて行う。今年の数字にはならないが、来年の受注に向けて、大きなテーマとして考えている」 ──昨年は旅連との共同事業として、上海へのインバウンドミッション『オールジャパンツーリズム2006』と、新観光素材の開発をテーマとしたシンポジウムを行った。今年の予定は。 「『オールジャパンツーリズム』は最低でも3年間の継続事業ということで行ってきたので、時期や方面は未定だが、今年も行う予定だ」 「シンポジウムも『新観光素材の開発を旅連とコラボでやりましょう』という意味において、ぜひ行いたいと思っている」