国内旅行と宿泊券の拡販に、トップツアーはどう取り組むのか。石川邦大執行役員に聞いた。 ──昨年の販売実績をうかがいたい。 「総販で1564億円。前年比3.2%減となった。このうち国内1052億円、海外475億円、訪日旅行21億円で、前年比はそれぞれ5.7%減、3.3%増、19.2%減となった」 ──要因は。 「国内では個人旅行が落ち込んだ。首都圏のカウンター店舗を施策的に閉めたことが要因として大きい」 「海外の伸びは法人・団体の順調な推移と外的要因としての燃油サーチャージの上昇が影響している」 「訪日旅行の減は、前年に大きな団体があったためで、昨年実施しなかった分が落ち込んだ」 ──宿泊券販売は。 「宿泊関連売り上げとして396億円。前年比93%にとどまった。目標を450億円に設定していたので、対目標では88%にとどまった」 「カウンター店舗を閉鎖した分の売り上げ減を、インターネット販売で補う計画だった。ただ、ネットのシステム開発に遅れが出て、昨年中の稼働ができなかった。それが響いた」 「団体については宿泊関連の取り扱いは落ちていない」 「商品で比較的良かったのは小グループ向けの『宴会部長』。これまで営業マンの販売がメーンだったが、店頭での販売も好評を博した」 ──今年の目標は。 「総販で1626億円。部門別では、国内1085億円、海外498億円、訪日21億円だ」 ──出足はどうか。 「第1四半期は少し苦戦しているが、年間ではなんとか取り戻したい」 ──目標達成の施策は。 「当社は3カ年の中期計画を策定しており、今年がその初年度。収益性の高い企業を目指している。初年度はお客様のニーズにマッチした商品の提供に力を入れる」 「お客様の旅行に対するニーズが多様化している。当社は昨年から「シグマ」という団体の案件分析管理システムを導入している。どんな業種・業態のお客様が、どんな目的で旅行に行っているかを分析できるシステムだ」 「本年新設したマーケティング部では、シグマのデータから業種・業態別の現在の旅行需要を分析し、その結果をもとに、お客様のニーズに合った、企画提案型のセールスを推進しようと考えている」 ──団塊世代への対応は。 「団塊の世代という括りではとらえていない。こだわりを持った世代層ととらえお客様のニーズに合ったテーマ性の高い個人旅行の販路や市場の可能性を1年かけて研究するつもりだ」 ──宿泊券の増売へ取り組むことは。 「宿泊販売で意識するのは、ネットエージェントだ。ネット業者のホームページはユーザビリティー(使いやすさ)に長けている。また、旅行以外の様々な販売をネットで行っており、ポイント利用の汎用性が高いことも特長だ」 「ただ、ネット業者のサイトの多くは、現状は交通機関やその他の旅行素材を付けられなかったり、企画性に限界がある。我々は企画面で強みを生かせる取り組みを早急に推進する必要がある」 ──ネット販売はどこまで伸びるか。 「団体旅行は別として、個人旅行はここ数年で全体の半数を越す可能性があると考えている。今から5年前に、楽天トラベルさんがこんなに伸びるとは、誰が予想しただろうか。若い世代は携帯電話で物を買ったり、情報を得たりするのが当たり前になっている。路面の店舗で旅行を買う必要性は将来的に少なくなるだろう。詳しい説明が必要だったり、高額な商品、例えばウエディング商品などはリアルな店舗の必要性が高いが、単品商品はネットの方向に進むだろう」 ──トップツアー協定旅館ホテル(旅ホ連)との関係強化については。 「これからの時代にふさわしい旅ホ連との関係を考える委員会がこのほど発足した。第1回は現状分析を行った。2回目以降は旅ホ連と当社がウイン・ウインの関係を目指すための、具体的な方策を検討する予定だ」 ──旅館で変えていかねばならない点は。 「強いていえばインバウンドへの対応。外国のお客様が旅館を選ぶときの指標が少ない。『ここはこういうスタイルの宿』だとひと目で分かる指標が必要だと思う」 ──トップツアーで指標を作れないだろうか。 「検討する必要はあるかもしれない」 ──4月18日の総会に向けて、旅ホ連会員にメッセージを。 「お客様あっての商売。お客様と旅ホ連とトップツアーの3者が、より良い関係を築けるように、がんばって参りたいし、旅ホ連の皆様のご協力もお願いしたい」 ──能登半島で大きな地震があった。被災地にひと言。 「旅行会社として、できる限りのことをしたい。何をすればお役に立てるのか、現地のご意向を伺って協力したい。一番懸念すべきは風評被害。少しでも多くのお客様を送れるように努力する」