北海道洞爺湖サミットが7月7〜9日に開かれる。日本における5回目のサミットで、舞台となる北海道は世界にその存在をアピールするまたとないチャンスとなる。本紙ではサミット開催を控え、在北海道の各国総領事に、日本と北海道の観光の魅力や、観光振興への提言を聞いた。最終回の5回目は在札幌ロシア連邦総領事館のシェフチューック・レオニード総領事。聞き手は本社顧問の石子彭培。 ──いよいよ北海道洞爺湖サミットが始まる。今回のサミットで、何を期待するか。 サミットは参加国にとっても世界にとっても大変重要なイベントだ。サミットの場では世界で一番重要な問題が討議され、打開策の探究が行われるという意味で、大きな期待をしている。環境問題が主題になると思うが、特に強調しておきたいのは、北海道は環境問題を討議するのに適切な場所だということだ。北海道の人々は自然を大切にしており、世界の模範になる地域・場所だからだ。 オゾンホールの破壊など地球温暖化の問題も取りざたされているが、まずこの環境をどのように大事にしていけばいいのか。大きな問題を免れる方法を見いだして具体的に行動をとる必要がある。地球に住む皆さん1人ひとりが行動しなければ解決できないだろう。洞爺湖は大変素晴らしい湖だ。その中の中島にも遊覧船で行ったが、そこも自然豊かなところだ。世界の首脳陣も気に入ると思う。 ──北海道の印象はどうか。 私は日本に22年間いて、そのうち北海道には4年しかいないが、非常に印象深い場所だ。その中で、北海道の人は特別だと感じる。歴史も伝統も違うが、ロシア人とも共通性があると思う。一言で言えば、開拓者の精神だ。なぜ、そう感じたかというと、この部屋にある彫刻は苫小牧でいただいたものだが、これは日本人が北海道の開拓を始めてから、初めて子どもを産んだ女性の彫刻だという。列車も自動車もなく、自分の足で長い距離を歩かなければならなかった厳しい時代に、子どもを大事に守り、どこに行っても生きていけるという母親の表情、開拓者の精神が出ている。これは本当に心打たれる姿だ。 北海道の人はお互いに協力する精神を持っており、これがないと新しい土地の開拓は難しかっただろう。北海道の人たちはいろいろな障害や難題に耐える精神を持っていると思う。そして、親切な人が多い。北海道で一番大事なのは、人間だ。もうひとつは、北海道には見所、名所が非常に多い。札幌では北海道開拓の村、藻岩山、道庁赤レンガ、時計台などたくさんある。旭川や帯広に行けば広々とした町がある。私が最も親近感を持つのは、函館だ。私は北海道のたくさんの町に行ったが、函館はロシアと日本との公式関係の始まりの場所。函館は札幌よりも古い町だ。日本は函館から世界を切り拓いていったと言ってもいいかもしれない。 その函館でロシア領事館の建物が今でも大事にされていることに心打たれた。また。在日ロシア人墓地には当時のロシア領事の妻が眠っているし、ニコライ司教が日本で初めてギリシャ正教を伝えたハリストス正教会は火災などで一度はなくなったが、再建されて今でも日本の皆さんに親しまれている。日ロ関係に直接関係していたところが今でも大事にされていることを強調しておきたい。 それぞれの町にはそれぞれの素晴らしさがあるが、北海道は町から町に移動する時に見るべき自然と景色がたくさんある。自然こそ北海道の宝だ。人が大事にしないと自然も長く持たないだろう。これは人間の役割だ。その役割を北海道の人たちは果たしていると思う。 ──北海道はサミットを契機として、外国からの観光客を増やしたいと思っている。どこに力点を置いたらよいか、考えを聞かせてほしい。 やはりPRが必要だと思う。日本とロシアの関係について言えば、大きな課題のひとつとして、お互いのことをもっとよく知るという努力が必要だ。今、ロシアの経済状況は悪くないから、外国に行ける人数が増えて、日本のことも含めて外国のことを知る機会が増えており、未来へのいい見通しになっている。それをさらに合理的にする上でも、日本がもっと自分の国のことを外国人に知ってもらうためのPRが必要だと思う。 今ではインターネットでいろいろなことを知ることができるが、逆にあまりにも情報が多すぎる。情報が多すぎるというのは、少なすぎるということに似ている。外国語に翻訳するなどして、簡素化した形で、どう外国に紹介できるかを考えることが必要だと思う。大切なのは、お互いの来客を増やすことだ。日本からロシアのサハリン州や沿海州などへは週末旅行ができるほどの距離だ。日本の皆さんはロシアの自然を気軽に楽しめる。ホテルはまだ多くはないが、少しずつ増えている。また、ロシアから日本に来る人数も増えれば、ロシアの日本に対する夢や希望も増えるはずだ。 これからは互いに交流する機会を増やす必要がある。北海道ではすでに実現していることもあるが、観光客を増やすためにはもっとPRと交流が必要だと思う。また、新幹線にも期待している。新幹線が北海道に来たら、経済が必ず活気づくと思う。それから自動車道の整備。これからはもっと多くの自動車が走る時代が来ると考えて、もっと道路を広くすべきだ。これは経済の問題にかかわるので、専門家に任せなければならないが、道路網をつなげるとか、道路そのものを広くすることを考えるべきだ。 旧ソ連時代の日ロ貿易の取引額は年間60億ドルほどだった。しかし、まだ日米貿易や日中貿易ほどではないが、昨年は130億ドル、今年は185億ドルまで上がった。今はヨーロッパよりもロシアの方が経済発展しているので、これからも日本との貿易が増える可能性は非常に高いと思う。観光を盛んにして、同時に経済交流を進めれば、さらに観光客が増える可能性は十分あると思う。 【プロフィール】 シェフチューック・レオニード氏 1946年、ウラジオストック市生まれ。ウラジオストック極東国立大卒。71年在日本国ソビエト連邦(現ロシア連邦)大使館勤務。在日本国ロシア連邦大使館参事官、ロシア連邦外務省日本部部長などを経て、04年9月から在札幌ロシア連邦総領事。