読売旅行の社長に6月12日付で、巣瀬一・常務取締役が就任した。読売新聞社出身のトップが多い同社の中で、鎌倉日出夫・現常勤最高顧問以来、2人目の生え抜き社長となる。営業経験に富み、社員の信望も厚いという巣瀬新社長に、新生読売旅行のかじ取り、協定旅館ホテル連盟、契約指定協会との関係を聞いた。 ──社長就任から約1カ月。現在の心境は。 「社員の期待を身の引き締まる思いで感じており、『しっかりやらなければ』という緊張感がますます高まっている」 「私は営業所・営業本部など現場の仕事がほとんどで、昨年まで本社勤務の経験がなかった。そのせいか、特に全国の営業所の所長たちから『巣瀬さんが社長になったのだから、やらないわけにはいかないな』という声が上がっている(笑い)。社内がさらに一丸となって進めるような雰囲気が出てきたような気がする」 「今年は大手旅行業の多くで社長が交代した。みんなが一列にスタートラインに立った、という感じだ。このような状況の中で、『遅れてはいけない』と気を引き締めているところだ」 ──今回の役員人事は創業以来、かつてないほどの異例の人事というが。 「今期の取締役は、生え抜きの役員が14人中11人と大半を占める大幅な刷新となった。これは創業以来初めてのことだ。土井会長をはじめとする、読売新聞社出身の役員の英知と、現場経験豊富な生え抜き役員の力がかみあって一段の社内活性化が図れると確信している」 ──会社が意図するところは。 「読売と名の付く関連会社は180社ぐらいあるが、その中で私たちは、お客さまと直接接する部分が一番といっていいほど多い会社だ。お客さまの声をスピーディーに経営に反映させるということだ。社内の意識改革もある。読売新聞グループ本社も、『関連会社も自立して、独自の経営陣を育てるべきだ』と説いていた」 ──先の協定旅館ホテル連盟の総会で前任の鎌倉、土井社長路線を継承するといっていたが、独自の巣瀬色は出していくか。 「私の場合は現場出身だから、現場の強化をもう一歩進めてやらねばならないと思う」 「当社創業の理念は読売新聞の読者サービス。読者の皆さまにご満足いただける旅行商品を提供することだ。ただ、今の若手社員は創業の原点を忘れているというか、分からないまま進んでいる部分もある。その点も直していこうと思っている」 ──昨年度は最終黒字を確保したが、取扱高が若干減少した。 「当社は総売り上げ1千億円規模の企業だが、昨年は981億円台と、割ってしまった。やはり1千億円にこだわりたい。取り扱うお客さまの数も、昨年は500万人を少し割り、487万人になった。今年は500万人を再び超える、530万人を目指している」 ──売り上げと取り扱い人員をどう伸ばすか。 「当社は主催旅行が柱。その中でも国内旅行が売り上げの8割5分を占める。まずは国内旅行の取り扱いをしっかり構築することだ」 「全社および営業本部ごとのキャンペーンをうまく仕上げることが必要だ。それから、協定旅館ホテル連盟、契約指定協会との連携。連盟、協会で北海道から沖縄までの地区会ごとにイベントを立ち上げてもらい、そこに送客をする、という形を今、作ろうとしている。例えば北海道では函館・道南のクリスマスフェスティバル、沖縄では大琉球まつりなどを企画していただいている。沖縄などはすでに実績が上がっている」 「あとは今年で10年目になる新聞社主催型のキャンペーン『読売ロマンの旅』。昨年まではデスティネーションを1カ所に決めて行っており、年間10万人以上を送客してきた。だが、今年は少し手法を変えて、日帰り旅行や、多岐にわたるデスティネーションを設定するなどの取り組みをしている。送客目標を20万人に設定したが、すでに達成している。今は目標を上方修正して、35万人ぐらいにしようと考えているところだ」 ──協定旅館ホテル連盟と契約指定協会との連携が欠かせない。会員にメッセージを。 「私どもの主催旅行を中心とする商品造成にご協力をいただきたい。皆さまに提供いただいた旅行素材をしっかりと売っていきたい。会社と連盟、協会が情報を交換するソーシャル・ネットワークを立ち上げたが、よりよい商品の開発に向けて、積極的な活用もお願いしたいと思う」 【プロフィール】 巣瀬 一氏(すせ・はじめ) 1946年7月6日生まれ。1969年読売旅行入社後、大宮、五反田、土浦、宇都宮などの営業所に赴任。北陸・中部営業本部長、関東北営業本部長、関東営業本部長を経て2005年取締役、2007年常務取締役。