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 ■観光業界人インタビュー 第2478号≪2008年8月2日(土)発行≫掲載
宿泊施設とも力を合わせ
4泊に向けた行動起こす


日本旅行業協会
会長
金井耿氏

──日本旅行業協会(JATA)の会長に6月13日に就任した。今の率直な心境と抱負は。
「JATAという業界団体の持つ意味合いの大きさからすると、その舵を取るのは容易な話ではない。責任の重さをひしひしと感じている。3つの重要なテーマがあり、この状況をどう進むかを見極めなくてはならない。1つは、政府が観光立国を目指すなかで、旅行業界がどのような形で貢献していけるのかだ。JATAは相当重い役割を担う覚悟が必要だ。2つ目は、ビジネスモデルの変化にどう適応するのか。3つ目は現下の状況への対応。例えば、若者が旅行に行かなくなってしまっていること、海外旅行で言えば燃油サーチャージなどの問題、さらに景気も楽観できない」

──当面する問題への対処のほか、会長として力を入れていく事柄は。
「1300の会員各社は旅行業という点では共通しているが立場はさまざま。業界団体が機能しうるには共通の課題認識を持つことが前提となる。そのためには国内や海外の旅行先や、宿泊施設、航空会社といった関係業界、消費者、行政などの情報を的確に発信していく。情報発信のツールとして、JATAホームページやメールニュースなどの有効性の検証も欠かせない。中身と手段の両面で的確な情報を発信することによって、会員間の課題認識がコンセンサスとして形作られるようにもっていく」

「旅行会社が業界団体に入る大きな意味は、業界全体として取り組むことで需要喚起につながるからだ。いろいろな政策提言をより積極的に行い、需要創出につなげていかなくてはいけない。これに関しては会員間の認識に隔たりはない」。

「人材の育成も非常に大きなテーマ。旅行業は本当に人だ。会員各社が個別に行うこととは別に、業界全体として貢献できる形を模索していきたい」

──今年、国内旅行事業では何に重点を置く。
「観光立国推進基本計画の中に1人当たりの宿泊数を年間4泊にする目標がある。JATAの国内旅行委員会では今、宿泊旅行の促進を目指して、4泊に近づけるための行動基本計画をまとめているところだ。我々旅行業だけでは難しいから、関係する行政官庁、地方自治体、地域の観光関係者、そして宿泊施設がそれぞれ有機的な形で力を合わせて宿泊増につながるようにしよう、と提言するつもりだ。秋頃に骨格がはっきりしてくる。観光立国推進基本計画では平均宿泊日数2.77泊をベースに4泊の数字を出したが、今年の統計発表では2.47泊(暫定値)に下がってしまった。今の厳しい状況を打破できるようにしていきたい」

──海外旅行の団体というイメージが強い。一方、国内旅行分野で見たとき、主要な旅行会社のほとんどが属しているのもJATAだ。国内観光の専門紙として新会長に国内の取り組みの活発化を期待している。
「ビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)も4月から始まり、海外旅行に力を入れているのは間違いない。アクセントの置き方は状況によって変わるものだが、基本スタンスは海外旅行、国内旅行、訪日旅行を三位一体のものとしてバランス良く発展させること。ただ当面の課題として、海外旅行者が減ってしまったという事実が重いのでVWCを実施した。国内を軽視するつもりはない。例えば、旅館・ホテルとの間にある問題も、個別の旅行会社と旅館とのやり取りがクローズアップされるケースが多いので、業界でどういうふうにやるのかの議論がなかなか注目を浴びなかったのではないか」

──対旅館・ホテルとのあるべき姿について考えを聞きたい。
「宿泊に関する流通の形態がかなり変わってきた。旅館・ホテル側からすると、旅行会社との関係をどう改革するのかが大きなテーマになってくるのは間違いない。だが、それだけでいいのだろうか。今までは手数料が高いか安いかといった議論が中心にあって、国内旅行全体のパイをどう増やすのかという話までにはなっていかなかった。今回、政府が4泊にしようと宣言したことは、1つの大きな転機になりうる。旅行会社と宿泊施設が気持ちを合わせて手を組まなければ実現しないのだから。いろいろなやり取りはあると思うが、国が示した明確な目標に向かって我々が共同戦線を張ることを新しい局面として考え、仕切り直すいい場面だ。そこでお互いが新しくウインウインの関係を創っていけたらいい」


【聞き手・板津昌義】
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