日本旅行の社長に7月2日付で丸尾和明・前JR西日本副社長が就任した。新社長に会社の経営方針、協定旅館ホテル連盟との関係を聞いた。 ──社長に就任した現在の心境は。 「旅行業も鉄道も、基本的な部分は変わらないと思う。ともに人で成り立っている商売だ。人を育てることや、人材を大切にすることが大事。人の力を最大限に発揮できるようにしなければならない。そして、その前提はコミュニケーションではないかと思う。組織の中のコミュニケーションをしっかりすることが重要だ」 「就任以来、『3つのS』ということを社内で言っている。ひとつはスピード。スピード感を持って商品作りなど様々な施策に取り組む。2つ目はソフト。柔軟性をもって、既成概念にとらわれない取り組みをする。最後の3つ目はスマイル。明るく笑顔で応対する。そしてお客さまから笑顔をいただけることを最高の喜びとする。この3つをキーワードにしようと、今、社内で話しているところだ」 ──どこの会社にも強みと弱みがある。日本旅行の強みは。 「強みといえば、大変実直でまじめに誠実に取り組んでいる、ということではないか。これは、お客さまなどまわりの皆さまから信頼されるためのひとつの要素になると思う。従ってその部分を継続して伸ばしていかねばならない」 「当社は今年から始まった3カ年の中期経営計画の中で、『選択と集中』ということを打ち出した。インターネット、BTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)、インバウンド、特定マーケット、という成長分野に経営資源をシフトする。その一方で、従来の基幹分野でも、例えばセールスでは大都市圏を強化するなどの『選択と集中』を行っている。ご質問の『強みと弱み』という部分に関して言えば、このような成長分野へのシフトを加速させていくことによって新しい強みが作れるのではないかと考えている」 ──日本旅行は親会社がJR西日本だけに、西日本エリアでは非常に強いと思う。ただ、首都圏という巨大マーケットもある。どう取り組むか。 「当社はJR西日本の旅行業部門『TiS』と統合をしたし、JRの駅の中に店舗がたくさんあるだけに、西日本エリアでは知名度が非常に高いと思うし、ブランドとしても定着していると思う。一方、お話のあった首都圏だが、確かに私どもとして考えなければならない課題のひとつだ」 「今の経済情勢やお客さまの動向を見ると、鉄道を使った旅がこれから増えてくるのではないか。私自身も33年間鉄道業に携わってきたし、そういう過去の経験を生かしながら、鉄道との連携をより深めていって、質のよい商品を作っていく。そうすることが首都圏における販売のひとつの切り口になるのではないかと考えている」 ──JTBは「交流文化産業」を目指すという。日本旅行はどうか。 「私どもは企業の方向性を『トラベル・バリュー・クリエーター』としている。旅行の価値を創造するということだ。交流ということが含まれるかもしれないが、中核となるのはトラベル。トラベルの価値を創造し、それをより高める企業にしていきたいと思う」 ──宿などの手数料のあり方が問われている。季節によってパーセンテージが変わる波動性を付けたり、富裕層対象の商品では手数料をお客さんからもらうなどの方策もあるのではないか。 「難しい問題だが、いずれにしても、就任会見の時にも申し上げたが、宿を含めたサプライヤーの方々とはウイン・ウインの関係を作っていかねばならない。我々のステークホルダーすべてがウインになるような仕掛けを考えていかねばならないと思う」 ──日本旅行協定旅館ホテル連盟との関係は従来通りか。 「より緊密にしていかねばならない。皆さまとはこれからお会いすることになるが、先ほど申し上げたウイン・ウインの関係を一層強固なものに築きあげていきたいと考えている」 【プロフィール】 丸尾 和明氏(まるお・かずあき) 昭和26年9月28日生。大阪大学法学部法学科卒。昭和50年国鉄入社。JR西日本代表取締役専務取締役兼執行役員総合企画本部長、福知山線列車事故対策審議室長などを経て平成18年6月から同社代表取締役副社長兼執行役員鉄道本部長。20年7月2日から現職。