──旅行業界を取り巻く環境をどう見ている。 「燃油の料金も上がるなど旅行業者は海外へお客さまを送り出すのが大変だ。片や外国からのお客さまの数は増えている。インバウンドについては今まで旅行業が必ずしも十分に手がけてこなかったので、旅行業の果たす役割はまだある。国内旅行では、昔からの職場旅行など団体旅行から個人旅行へ移っており、旅行者の関心も多様化している。着地型、ヘルスツーリズム、エコツーリズムなどニューツーリズムも出てきている。そうした旅行者のニーズをくみ取った旅を商品化していくことが求められている」 ──ANTAでは、着地型旅行について「国内観光活性化フォーラム」を通じて定着化に取り組んでいる 「消費者のニーズに合った形で商品化し、販売ルートに乗せて普及していくような格好になると非常にいい。だが、思うようにはいっていない現状があるので、その問題がどこにあるのかを解明し、問題を取り払っていく必要がある。例えば、自治体などでも観光客誘致のために着地型について積極的に取り組もうという動きがある。そういう取り組みを盛り込んで商品化して、旅行をしたい人に『こういう情報があるよ』とうまく提案できれば、もう少し普及するのではないか」 ──専務理事として、どのような働きをしていく。 「5700の会員が属している。ANTAとして会員をうまくまとめてブランド化ができれば、大手の旅行業者にも匹敵する力になりうる。着地型旅行の促進に関しても、ANTA会員で協働して情報公開や販売をするという道を模索していけるはずだ。あくまでも個々の旅行業者としての考えが第一にあって、なかなか利害が一致しないところもあるとは思うが、そういったことができたらいい」 「公益法人の制度が変わる。12月の法律施行に合わせて、社団法人の組織をうまく移行していくのも大きな役割だ。今、新しい法人に移行して体的にどういうことに取り組んでいくのか検討しているところ。国内旅行業務取扱管理者試験などの事業も引き続きやりながら、公益的なことと会員のための組織として会員の利益になることをやっていきたい」 ──10月にいよいよ観光庁が創設される。 「観光立国推進基本法もでき、国の進むべきあり方として観光立国が柱だと明らかになってきた。観光庁として独立して、大きな権限と発言力を持った組織を作り、国が観光に力を入れるのは歓迎すべきことだ。行政は、例えば大臣間で日中韓の観光交流を推進しようしていて、去年は日中国交回復35周年、今年は日韓観光交流年を契機に取り組んでいる。交流が盛んになってくれば旅行業者に大きなビジネスチャンスが生まれ、利益として返ってくる。そうした意味からANTAでは、観光庁の目指す方向に合わせて各種の事業を実施していきたい」 「最近感じるのは『観光は平和産業だ』ということ。政府レベルだけでなく各国の人と人との交流が誤解を解決することにつながる。『観光にとって平和な時代が望ましい』という言い方もできるが、『人々を平和にするのが観光産業だ』とも言える。『旅行すると心身ともにリラックスできる』などと誰もが言う。旅行業は、産業としてなかなか意義のあるものだ」 【プロフィール】 しまざき・ゆうへい 57歳。1976年、東京大学法学部を卒業し、運輸省(現国土交通省)に入省。運輸政策局観光部旅行振興課長、内閣官房内閣審議官(大陸棚調査対策室長)、近畿運輸局長、海上保安庁第三管区海上保安本部長などを歴任。08年7月に退官し、現職に。