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■観光業界人インタビュー 第2505号≪2009年3月7日(土)発行≫掲載
旅館・ホテルの金融問題
山田ビジネスコンサルティング
コンサルティング事業本部第二部
マネージャー
青木康弘 氏
──いま、旅館業界で一番の関心事は金融問題だ。キャッシュフローに行き詰まり、元利金の支払いが滞っている旅館は、銀行がいつ何を言ってくるか分からないとビクビクしている。
「経営不振におちいっている旅館・ホテルの経営者は財務会計に苦手意識があるようだ。入り込みや稼働率に関心は強いが、結果として営業利益、経常利益、キャッシュフローがどれだけ出て、それを原資にどれだけ借入金を返せるのか、ということには無頓着だ」
「旅館・ホテルは装置産業だから、ほかの業種に比べて借入過大になりやすい。だから銀行との付き合いをきちんと考えなければいけないのだが、借りるまでが一所懸命で、借りた後はすっかり忘れてしまう。接客や営業ばかりに目がいき、会社の具体的な財務会計については経理の担当者に任せっきりにする。事態が深刻になっても気付かないことがよくある」
──旅館・ホテルは金融機関との付き合い方を知らないということか。
「『10年で返済する計画が実現できなくなりそうだ』『15年、20年かかりそうだ』という時は、リスケジュールという、返済条件の変更を銀行にお願いする。その時は必ず事業計画の提出が必要だ。将来の大規模修繕費や法人税等を見込んだ上で確実に返済できる見通しが立てば、銀行も納得するということだ」
「銀行は経済合理性を重視する。旅館を潰して、債権を回収する方が得か、10年の返済を15年に延ばして完済してもらう方が得か、の判断を行う。ただ、旅館・ホテルは収益還元法と呼ばれる手法によって不動産価格を算出するため、売っても二束三文のところが多い。銀行としてはただちに倒産させるということは選びにくい。だから、『将来きちんと返せますよ』ということをきちんと示せれば、返済の条件変更の相談に乗ってもらえるはずだ」
──ただ、返済計画や事業計画をどう作ればいいか分からない、という旅館が多い。コンサルタントに頼んでも高額の料金を取られるという。
「やり方さえ分かれば、自力でも作れるはずだ。コンサルタントには作成のアドバイスを受けることや作成した事業計画のチェックだけを依頼すれば相当安くつく。どうしても自力での作成が困難な場合や、銀行への説明に不安がある場合は相談してほしい」
──再生プランを明確にして、銀行に自ら乗り込む姿勢が必要だ。
「そう。経営者自らが、自分の言葉で会社の将来を語らなければならないし、そこには誠意が必要だ。誠意というのは、例えば役員報酬をカットするとか、接待交際費を下げること。銀行員も人の心を持っているから、自分の給料を下げて、交際費も下げて、と言われれば、『そこまでするなら話を聞いて協力しましょう』となるはずだ」
「行動のタイミングが重要だ。いつ、危機意識を持って取り組むか。再生プランはいま、まさに必要なものだと思う」
【あおき・やすひろ】
一橋大学大学院商学研究科経営学修士コース修了。その後、山田ビジネスコンサルティング株式会社のマネージャー。中堅中小企業を対象に経営戦略立案や事業計画の策定・実行に関わるコンサルティングに従事するほか、地方銀行協会で研修指導を行っている。群馬県出身、33歳。
【聞き手・本社社長 江口恒明】
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