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■観光業界人インタビュー 第2510号≪2009年4月11日(土)発行≫掲載
個人旅行開拓へ体制整備
トップツアー
執行役員
旅行業務本部長
水村祐一 氏
──先ごろ、08年12月期の決算が発表された。
「営業損益は4億7400万円の黒字となり、これで6年連続で黒字を計上したことになる。継続的な経営改革の結果と受け止めている」
──東急観光時代は慢性的な赤字だった。
「独立したのは04年だが、確かに赤字体質だった。10年前の金融危機の時は50億円以上の赤字を出したこともある。社員も心のどこかに『東急が何とかしてくれるだとう』という気持ちがなかったとは言い切れない。それが独立によって、自分の食い扶持は自分で何とかしなければならないという立場に置かれ、社員の意識も大きく変わった。同時にさまざまな分野で改革を進めてきたが、そのスピードは他社よりも速かった。筋肉質な体質になり、無駄がなくなったのがこの数字に表れている」
──株主の交代、若い社長の就任も良い方向に出た?
「ポラリス・プリンシパル・ファイナンスはみずほ証券系ということもあり、バックもしっかりしている。現在の旅行業は情報に対する感性が若くなければ経営できない。ましてや変化の時代、古い考えは通用しない。石川社長は、『良いところは残し、変えるところは思い切って変える』というスタンスであり、適任だと思う。年上の幹部社員に遠慮もあるだろうが、そこは我々がしっかりとサポートしていく」
──今の旅行環境をどう見ているか。
「昨年後半から局面がガラリと変わり、非常に厳しい時代だった。幸か不幸か、当社は他社よりも不特定多数を対象にした個人市場に対する接触面が狭かった分、不況の影響は少なかったようだ。当社は団体旅行を中心に、いわゆる教育旅行や自治体(公務)、MICE関係の取り扱いを得意としており、安定した需要のあるこれらが結果的に個人旅行の落ち込みをカバーした格好だ」
「昨季の団体旅行利益率・利益額は高付加価値提案によって他の大手と肩を並べることができた」
──なぜ個人旅行の拡大を狙うのか。競争は厳しいと思うが。
「伸びしろがあるのは個人旅行だからだ。市場を見ても、団体のパイはそう増えないが、不特定多数を対象にする個人旅行の商売は、やりようによっては確実に伸びる。当社は渉外営業を得意としてきた分、どちらかというと個人旅行はおざなりだった(笑)。しかし今、インターネットの普及とともに個人旅行市場に対する取り組みを変えた。1月には当社として初めて、全社の個人旅行販売に責任を持つ個人旅行事業部を設立、本格的に個人旅行に取り組む体制を整えた。
──どんな組織か。
「部の下に全国営業推進室、企画マーケティング課を設けた。個人旅行の各支店の販売、ウェブ販売、提携販売のすべてを全国的に推進し、また、マーケティングから数値管理まで行う」
「まずはウェブでの販売に勝負をかける。コンテンツを充実させて、マスに対する働きかけを強化するのはもちろん、渉外営業の強みを生かした独自の展開を目指す」
──団体旅行については。
「さらに磨きをかける。団体は一般団体、教育旅行、公務(自治体関係)などがあるが、もう1つの安定した柱として、宗教に着目。昨年7月には本社内に『団参センター』を設け、体制を整えた。すでに大型団体の受注もある。いずれは全国に拠点を設ける考えだ。宗教関係を扱える旅行業者は限られている。専門的な知識が必要で、幸い当社にはそうした社員がいる。これら社員の知識、ノウハウをマニュアル化し、社員教育に生かし、人材を育成する」
「旅行の個人・小グループ化という大きな流れの中で、団体旅行を扱える業者が減っている。新しい時代の新しい団体旅行を扱える貴重な業者となりたい。企画・提案力を付け、『トップツアーに任せておけば大丈夫』と言われるような、選ばれる業者をめざす」
──旅ホ連との関係についてはどう考えているか。
「全国に旅行業者が1万社以上ある中で、旅ホ連を持つのは10社に満たない。そのことの意味を重く受け止めている。ウェブビジネスの伸長により、施設の旅行会社依存度は低下しつつあるが、当社なりの求心力向上の手だてを打っていく考えだ」
──具体的には。
「時代の要請に合った団体・グループの送客のほか、当社の持ち味である渉外営業を生かした個人旅行の販売と、ウェブを活用した新しい施策を展開し、施設の皆さまにも納得感のある結果を出していく」
──旅館に望むことは何だろう。アドバイスをいただきたい。
「これからはヒューマンなところに焦点を当てた営業戦略が必要だと思う。例えば女将さん。これも貴重な観光資源だ。『あそこの旅館の女将さんの話はとてもおもしろい。一度は行ってみるべきだ』という人間力の発信。何でもいい、何かしら特徴を持った施設になってほしい」
「これは理想だが、いくつかの旅ホ連と旅行会社が一緒になって、例えば『日本遺産100選』の選定といった日本の魅力を発信するキャンペーンを展開、我々自身の手で需要創造を行うのも国内旅行活性化の1つの手段になり得るのではないか。そろそろそんなことも検討する時期に来ているのではないだろうか」
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