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■観光業界人インタビュー 第2530号≪2009年9月12日(土)発行≫掲載
拡大するFIT層を取り込め
ツーリズム・マーケティング研究所
代表取締役
高松正人氏
──政府主導のビジット・ジャパン・キャンペーンが実施され、訪日外国人旅行客が増えてきた。
「インバウンドは日本の観光業界にとって有望な市場だ。なぜなら、世界の人々が日本を『行きたい国』と思っているからだ。例えば、香港で売られている旅行ガイドブックやライフスタイルマガジンなどを見ても、香港の人の日本に対する関心の高さがうかがえる。ファッションも芸能も含めて日本のすべてに興味があるようだ」
──さらに需要を拡大するには何をすべきだろう。
「これから膨らんでいくのは間違いなくFIT(個人自由旅行)層。その人達を受け入れる仕組みが必要だ。私が注目しているのは沖縄ツーリストのレンタカー事業。2、3年前からインバウンドをすごく意識していて、今、沖縄でのレンタカーの新車にはすべて多国語ナビゲーションを付けている。北海道でも同じようにレンタカー事業を始めた。那覇空港のすぐ近くのレンタカーステーションには日本車の運転シミュレーターを置き、10分ぐらい練習してから外国人利用者に乗り出してもらう、ということもやっている。訪日個人旅行客を取り込むには何が必要なのかをよく考えている」
「日本人が行っても地方での二次交通には苦労する。東京や大阪などだけでなく、これから地方にも来てもらうためには、海外のお客さま向けのきちんとしたサポートを作り上げることが必要だ」
──受け入れ側の宿泊施設に足りないものとは。
「意欲だ。行政が言うからと建前でインバウンドに取り組んでいる旅館・ホテルが少なくない。食わず嫌いのところがある。韓国人客が来ると宿全体がキムチくさくなるとか、中国人客はパンツのままで風呂に入ってしまうとか思ってしまう。きちんと説明したり、自分たちで話さなくても説明用のチラシをチェックインの時にでも渡したりすればなんとでもなる。無料でつながるインターネットのパソコンをどこかに設置しておけば、自分たちで勝手に調べて出掛けていく。館内を4カ国表示にして、料理も全部変えないと、と思ってしまうが、そんなことは必要ない。難しいことでも、おっかながることでもない。国内旅行総需要は減ってきている。インバウンドを本気でやらない限り日本の観光の将来はない」
──宿泊施設はFIT客にどう対応したら良いのか。
「アジアのインバウンドは安いというが、それはパッケージを含めた平均値。富裕層もいる。これからのFITは、ネット上で購入してとにかく安い宿に泊まる人と、ステータスが高くて、それなりの値段の旅館・ホテルに泊まる人に顕著に分かれる。中国の場合、旅行業界自体が未成熟で旅行者にきちんと内容を伝えるノウハウを持っていないので、旅行者としては値段が安い方を選ぶ。施設も価格に応じた内容しか提供できないから、満足度が極めて低い。FIT化への対応とは、団体旅行ではできない個人のお客さまのニーズをきちんと汲み取ってあげることだ」
「宿泊施設の人は、中国の人も、韓国の人も十把一絡げでアジアの人と見てしまう。日本の利用者と同じように、わが宿はどの国のどのセグメントに対してアピールしていくのかをはっきりさせて、マーケティングをしていく必要がある」
【たかまつ・まさと】
50歳。1982年、東京大学教育学部を卒業し、日本交通公社(現JTB)に入社。京都支店、関西営業本部、人事部、経営改革部、IT企画部を経て、2000年にJTBグループの調査・コンサルティング事業設立準備を担当。翌01年、ツーリズム・マーケティング研究所を設立、同社マーケティング事業部長に就任。07年に取締役、09年から現職。
【聞き手・板津昌義】
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