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 ■観光業界人インタビュー 第2532号≪2009年9月30日(水)発行≫掲載
県との役割分担明確化
「奥の細道」など発信へ


東北観光推進機構
推進本部長
日野正衛氏


──機構の概要は。
 「北海道、東北6県、新潟の各知事らによる『ほくとう未来戦略会議』の提案を受け、東北6県主体の『東北6県観光推進協議会』と民間主体の『東北広域観光推進協議会』を統合して07年6月に設立した。会員は行政や交通・観光関連事業者など103社・団体だが、大手旅行会社の協定施設からなる賛助会員を含めると約900社。運営資金は官民が1対1の割合で出資し、現在2億円規模だ。『推進本部』はその実動部隊で、各県の職員や大手旅行会社、JR東日本社員ら15人で構成している」

──昨年10月に策定した中期計画の内容は。
 「最大の目標は2010年の東北の宿泊者数3980万人の達成だ。そのために、設立以来柱としている『東北の認知度向上と満足度向上』『国内大都市圏からの誘客』『東アジアを中心とした海外からの誘客』『観光戦略推進に向け総合的な役割を担うための体制作り』の4つの戦略に基づいた事業を進める」

 「誘客拡大のためには、航空会社や旅行会社の人に東北を知ってもらい、商品化してもらうことが1つのカギだ。初年度に行った大都市圏でのマーケット調査によると、東北の認知度は極めて低く、特に中京圏以西では半数以上の人が東北に来たことがない。そのため中京、関西、九州での旅行会社向けのセミナーや関西地区対象の視察研修旅行を行っている。参加者には東北ならではの魅力を感じてもらえているようだ。また広域モデルルート集『東北ものがたり1、2』を作り、テーマに沿って広域で動くルートを紹介して商品化を訴えている」

 「今年度は東北ものがたりのルートをどのようにして回ってもらうかを課題と考えており、二次交通の充実、具体的には域内高速バス乗り放題チケットの導入に着手している。名称を『東北おトクパス』とし、12月から3カ月間二ーズ調査などの目的で実証実験を行う。来年4月以降実用化できるよう働きかけていきたい」

 「インバウンド面では、外国人訪問者数58万人が目標だ。東京や京都などのゴールデンルートに行ったことがあるリピーターを狙い、海外プロモーションを進めている。特にFIT需要獲得のために二次交通の充実を図る。現在、トヨタ系レンタリース会社では英語版カーナビゲーションシステムを搭載したレンタカーを増やしており、多言語版の交通ルール説明やガイドブック、ルートマップの整備が必要と考えている」

 「また恒例となった9月インバウンド向け商談会『YOKOSO!JAPAN東北』事業では、今回は初めて『東北の冬』を売り込んだ。冬の落ち込みをなんとかしたいというのは、旅館・ホテル含め東北の悲願。小正月行事や雪祭りイベントは、北海道の冬とは違う東北の魅力としてアジア圏への強い訴求力となる」

──機構独自の事業の手ごたえは。
 「3年目を迎え、各県からの『東北をまとめる存在』としての期待を背に、個別の事業に積極的に取り組めるようになってきた。教育旅行セミナーなどは、実績が出てきている。また首都圏などの大規模市場に対する事業では、県と機構の役割分担、住み分けがようやくできてきた感じだ。機構としてはJR山手線ラッピングトレインや岩手・宮城内陸地震後の女将らによる首都圏でのキャラバンなどを行った。ウェブサイトでは7県全体のルートの紹介を中心に情報を提供し、各県の情報サイトへのリンクを充実させている。『東北に行きたい』と思った人がまず開く『ポータルサイト』の役目を意識したつくりだ」

──新しい取り組みは。
 「行政やボランティアガイドなどが一緒になって『奥の細道研究会』を立ち上げた。さまざまなところで奥の細道が再注目されつつあるので、東北一体となって奥の細道を再整備し、福島・白河の関から入って新潟・市振に出る広域の観光ルートにしたい。いずれはスタンプラリーなどができるよう、運輸局や整備局には統一感を持った形で旧道や案内表記を整えるよう働きかけていく。首都圏や関西でセミナーや勉強会も開きたい。一般にも広く紹介し、最終的には奥の細道を東北のブランドイメージとして育て上げ、国内外に発信したい」

 「来年の新幹線延伸のほか、11年は平泉の世界文化遺産登録が見込めるなど東北は明るい材料が多く、追い風だ。機構として今後さらに地域の方々からの要望に応えられるよう積極的に事業を展開したい」

【聞き手・小林茉莉】


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