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■観光業界人インタビュー 第2541号≪2009年12月5日(土)発行≫掲載
外国人のおもてなしに
ノウハウと人を提供
日本ホテル協会
会長
中村裕氏
──11月6日、協会創設100周年を契機として、観光立国の推進により一層協力していくと表明した。
「宿泊産業として観光立国を積極的に支援するのは当たり前のことだ。特にインバウンドの促進に関しては、われわれホテルの参画が欠かせない。ホテルはそもそも外国からのお客さまをおもてなしするために生まれたと言っても過言ではないからだ」
──訪日旅行客を受け入れるために必要なものは。
「われわれ日本人が海外に行って、ホテルで何を不便に感じるか。それは、何といっても言葉。だから、まずコミュニケーションが取れて、相手が望むことを理解して、きちんと提供できることが一番大事だ。英語はもちろん、中国語、韓国語でもコミュニケーションできるようにしなければならない。ネットサイトでの情報提供に加えて、パンフレットなどの印刷物も必要になってくる。ホテル従業員も母国語で話せる外国人を採用する。きちんと求めにこたえられるだけのコミュニケーションを取れるようにホテル協会でも指導していきたい」
──当面の目標として10年に1千万人を目指すビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)にはどのようにかかわっていく。
「富裕層の開拓、MICEビジネスの拡大に積極的に参画していく。富裕層の誘致策としては、現地に出向いて、セミナーやキャンペーンなどに参加したり、富裕層を扱うエージェントを日本に招き、積極的に富裕層を受け入れられる宿泊施設だということをアピールしていく」
「MICEビジネスは、ホテルが得意とする分野であり、ホテルがノウハウを一番持っている。そのミーティング、インセンティブ、コンベンション、展示会などのノウハウを広く提供して、世界でも日本はMICEの受け入れに優れているという状況を作っていきたい。昨年の洞爺湖サミットが一番の好例だ。ホテル協会では、経験のある42人を約10日間現地に派遣した実績がある。来年11月に横浜で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議では、サミットの倍以上の人が来る。手伝いが必要なら支援チームを組んで手伝う」
──これまで外部に対して力を貸すという姿勢はどちらかというと希薄で、メンバーホテルのための協会という色が濃かった。
「そういう時代があったことは否めない。しかし、それでは、このスピーディーな世の中に付いていけない。私が12支部を回った時も『ホテル協会の存在感をきちんとアピールできないか』といった意見がたくさんあった。国を挙げてもてなすという態勢づくりが整いつつあるわけだから、われわれもインバウンド誘致に積極的に協力したい。これは宿泊産業だけではできない。航空業界、運輸業界、旅行業界などいろいろな業界を観光庁なりがまとめて、官民挙げて新しいマーケットを掘り起こさなければならない。その中でホテル協会は、インバウンドを誘致するためのノウハウを蓄積して、蓄積したものを皆さんに提供していく」
──一方、国内旅行の振興の面でも、地域と連携して地域の活性化に取り組むと宣言した。
「宿泊施設による地域の活性化というと、湯布院や黒川温泉など地方の、旅館の方が目立つのかもしれない。しかし、これは地方だけの話ではなく、都市でもホテルと街との一体化で街を盛り上げようという状況になってきている」
「地元とのつながりで言えば、ロイヤルパークホテル(中村会長が会長を務める)が一番いい例だ。スローガンに『地元密着』を掲げ、日本橋とともに成長していこうと考えている。下町の日本橋とインターナショナルホテルとではミスマッチのようだが、まず始めたのが、地元の飲食店メニューのバイリンガル化だ。外国人はだいたい3泊し、最低1回は外で食事をする。そこで、地元を紹介しようと、『翻訳のお手伝いをするので、メニューに英語表記を付けてほしい』と飲食店の皆さんにお願いした。好評を得て、メニューだけでは物足りず、英会話の授業もやってほしいということになった。やがて、都内在住の外国人が聞きつけて日本橋に興味を持ち始めた。地元も手ごたえを感じ、外国人と日本橋で江戸文化を学ぼうというNPO活動も始まった」
「こうした地域活性化の実例を数多く作り、メンバーホテルに紹介する。それによって各ホテルでの実践につなげていきたい」
【なかむら・ゆたか】
【聞き手・板津昌義】
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