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 ■観光業界人インタビュー 第2563号≪2010年5月29日(土)発行≫掲載
「湯畑」の再開発に着手
官民一体の観光局設置


群馬県草津町 町長
黒岩信忠氏


──町政における観光の位置づけは。
 「私の政治スローガンは『観光と福祉の両立』だ。その上で、草津町は100%観光で生きている。多くの観光客が足を運んでくれないと町の経済は成り立たないのが実情だ。1人でも多くの客を迎え入れることが何より重要であり、観光は町政の大きな柱の1つと認識している」

──前任の中沢敬さんは観光カリスマで、知名度も高かった。やりにくくはないですか。
 「これまでの町長はすべて旅館業を営んでおり、いわゆる観光のプロが町長を務めていた。中沢さんもその1人だが、カリスマでもあり、講演や何やらで飛び回っていたというイメージがある。草津の名を広めたことは間違いない。私は旅館業出身ではなく、その意味では観光のプロではない、初の町長となる。これまでの町長とは違う視点で町政というものを見てきた。私の公約は地に足をつけた観光行政であり、腰を落ち着け、1つひとつ課題をクリアしていく。前町長のように飛び回ることはないだろう」

──具体的には。
 「最大の誘客対策は観光客が魅力を感じるまちになること。まず、草津のシンボルである『湯畑』の再開発に着手する。前町長も取り組んだが、町民や議会の反発もあり、頓挫した経緯があるが、これは必ずやりとげたい。駐車場をどうするかなど、いろいろな意見があることは承知しているが、粘り強く説得して、同意を得たい」

 「湯もみショーなどを行う『熱の湯』をどうするかという問題もある。老朽化しており、6月には耐震診断工事を行う。結果次第だが、再開発の観点から、建て替えもあり得る。いずれにしても、町民を含めた関係者の意見を十分に聞き、4年間の任期中に実現したいと考えている」

──群馬県は来年夏にデスティネーションキャンペーン(DC)を実施します。町にとっても集客のチャンスですね。
 「今年7月からプレDCが始まるが、関連予算として3千万円を計上した。観光協会にはこれまで観光事業委託費として5500万円の予算を付けていたが、これで8500万円となった。どういった事業に使うのか、今検討している最中だ。昨年実施した謝恩キャンペーン(11月〜3月)のように、必要とあれば柔軟に対応していく」

──観光関係の組織について見直しを考えているとか。
 「観光施策は民間の知恵と創意工夫を生かし、そしてスピード感をもって行う必要がある。そのため、官民一体となった『観光局』(仮称)を立ち上げたい。観光協会、旅館組合、商工会と役場の観光創造課を1つにした組織を考えており、現在、関係者と協議している。それぞれの力を結集し、町の観光のかじ取りは観光局が中心になって行うのが望ましい。組織見直しの話は前々から出ていた。それを具体化するだけ。できれば今年度内に立ち上げたい」

──草津といえば温泉だが、温泉関係では何か考えていますか。
 「毎分約3万2千リットルという豊富な湯量が自慢だが、このうち旅館などの浴槽に供給されているのは約1万5千〜6千リットルにすぎない。『もっとお湯がほしい』という希望が多いにもかかわらずだ。草津最大の観光資源である温泉がうまく生かされていない。このため、温泉の増量ができないか検討している。温泉の供給を増やし、それが浴槽施設の充実につながれば、草津の魅力アップとなるのではないか。皆さんのご理解を得て、実施したい」

──インバウンドについては。
 「台湾や韓国などを中心に年間約1万5千人の外国人が訪れている。草津はアクセスが決して良いとはいえず、気軽に来られる場所ではないのがネックだ(笑)。インバウンドも広域観光の時代であり、町としては軽井沢町と連携して外客を取り込みたい。東京方面からは、新幹線に乗ってもらい軽井沢で下車。アウトレットで買い物をして、バスで草津着。温泉やハイキングなどを楽しんでいただき、帰りは高崎駅近くにあるヤマダ電機で家電製品を買ってもらうというルート提案も考えられる。温泉とスキーを武器に、インバウンドをこれまで以上に増やしていく」

【くろいわ・のぶただ】

【聞き手・内井高弘】


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