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■観光業界人インタビュー 第2567号≪2010年6月26日(土)発行≫掲載
事業を立て直し、増売へ
2年でウェブ販売4倍に
ANAセールス社長
浅川修氏
──09年4月に就任され1年が経過した。昨年はどんな1年だったか。
「リーマンショック以来の厳しい環境下で、旅行業で利益を確保すること、前年よりも多くの方に利用してもらうことが非常に難しかった。旅行事業に携わってまだ短かったこともあり、昨年はいろいろ勉強させてもらった面が大きい」
──10、11年の新経営計画について伺いたい。
「昨年を踏まえて、経営計画に自分の考えを大いに反映させてもらった。当社はANAの増売に寄与するのが大きな役割だ。羽田の国際線本格開港、成田の増枠で輸送能力が増えるものの、ビジネス需要は本回復ではない。そのため旅行によるANA便利用の重要性がますます高まるだろう。これが今回の経営計画にある『旅行事業の立て直し』の動機の1つだ」
──「立て直し」という言葉を使われたが、具体的な問題点は。
「まずは効率的な体制かどうか。人員の効率化含めコスト削減が利益確保の視点からは避けて通れない。販売体制含め人員体制、組織体制を大きく変える必要を感じている。増売の観点では、マーケットニーズに合致した商品を提供してきているのか。また、お客さまの『手軽に』『簡便に』というウェブでの購買ニーズに十分こたえているかだ」
「体制の面では、10月を目途に、販売体制、仕入体制、予約体制を見直す。まずは、グループ4社(ANAセールス、同北海道、同九州、同沖縄)を1社にし、間接部門含め、人員効率を高めたい。大阪、名古屋などの商品の仕入、造成部門も東京に一元化する。また国内の予約販売センターも、拠点数を全国4カ所から3カ所にする。現在4社で約1850人の社員がいるが、2年間で約2割の400人を削減したい」
──マーケットニーズに合った商品とは。
「品質重視の『ANA's』は、4月からヨーロッパ商品を16人限定催行とした。方面によってはニーズに合わせフリープランに絞った方面もある。またパンフレットにツアー中に歩く距離や階段の有無などの情報を掲載して、参加可能かどうかを判断するのに役立ててもらえるようにした。国内では、以前表彰を受けた体験型プラン『感動案内人』をオプションで選べるようにしている。非常に良いコンセプトの商品なので、地道に育てるとともにもっとアピールしていきたい」
「当社のダイナミックパッケージ『旅作』は、お客さまから高い支持を受け、前年比も高い数字で推移している。間際化対策として主催旅行商品で、出発の3日前まで予約可能になった。大いに伸ばしたいし、投資もしていく」
──同じANAグループのANA楽パックとの違いをどう出していくのか。
「非常に難しい。飛行機は同じANAなので、ホテルの数やオプションの数、価格面などで大いに競争し、負けないようにしなければならない。場合によっては、感動案内人を旅作に組み込むことなども検討しなければならないだろう」
──大手他社もウェブへシフトしつつある。他社との差別化は。
「ウェブの世界は、システム投資額もリスクも大きいが、さまざまな面をできるだけ効率化してウェブへの投資を増やし、利便性や商品の品ぞろえの点で、常にアドバンテージをとっていきたい。大量に売ること、フリープラン型はなるべくウェブにまとめ、リアルは品質重視のパッケージ商品に特化したい。ウェブ販売は2年間で売り上げを4倍程度に伸ばす」
「ツアー利用者の『顧客化』も進める。ANAマイレージクラブ(AMC)会員に任意で入会してもらうメンバーサイト『旅達空間』があり会員が現在200万人。今後当社のツアー利用者にも旅達空間を勧め、会員を2年間で300万人にする。7月1日からは、旅行購入者に、AMCのマイルを購入金額200円につき1マイル付ける。今までは旅行しても航空券の分のマイルしかつかなかった。ためたマイルを旅行商品の購入に使ってもらいたい」
──インバウンドは。
「重要施策の1つだ。国内線需要の大幅な拡大が見込まれないなかで、訪日客の国内線利用による需要創出を期待している。インバウンドの売り上げは今年度、昨年比約40%増を目指す。なかでも中国市場。当社も個人客向けツアーを25コース用意しているが、ビジネスとしてはまだまだだ。当社は北京と上海に現地法人があるが、今年から北京の現地法人がANAの現地支店と共に中国人インバウンドのマーケティングと販売計画を進める体制にした。中国人の訪日はビザがネックになっているが、ニーズは大きい。経営資源を投下したい」
──パートナー会との連携は。
「現在、北海道、関東、名古屋、大阪、九州、沖縄の6地域で、旅館・ホテルや交通、観光施設など約1300施設の協力を受けている。会員施設には、日本のお客さまについては満足のいくサービスを提供していただいているが、訪日客を内需としてどう迎えるかはこれからの課題だ。一番の問題は言葉。案内用パンフレットや施設内標記などもなるべく中国語を併記することが必要だ。今後はパートナー会含め、多くの施設と協働、協力できることを考える必要がある」
【あさかわ・おさむ】
【聞き手・小林茉莉】
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