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観光業界人インタビュー 第2582号≪2010年10月16日(土)発行≫掲載
アニメツーリズムを推進

埼玉県産業労働部 観光課長
稲葉 尚子氏

──埼玉県は今年1月12日に「埼玉『超(ちょ〜)』観光立県宣言」を発表した。
 「埼玉には、海も大温泉地も世界遺産もない。ただ埼玉、東京、神奈川、千葉、茨城、栃木、群馬、山梨を合算すると4200万人の潜在マーケットを抱えている。この優位性を生かして日本一の日帰り観光県を目指す。東京を訪れる外国人観光客の誘致も積極的に行う。従来型の観光の発想を超えるという意味から『超』を付けた」

──具体的な活動内容は。
 「立教大学、埼玉りそな産業協力財団、JTB首都圏、埼玉県の4者で『観光エンジン人材養成協定』を2月に締結。市町村職員などを対象に地域活性化のエンジンとなる観光人材の育成を始めた」

 「とくに『アニメツーリズム』『ご当地キャラ』『ご当地B級グルメ』には力を入れている」

──アニメ「らき☆すた」の舞台となった久喜市(旧鷲宮町)の鷲宮神社には全国からファンが訪れる。
 「当初地元の人達にはなぜ人が集まってくるのかの理由が分からなかったという。熱心に訪れるアニメファン達を地元が受け入れ、交流するなかで『らき☆すた』の聖地が創られていった。9月5日の土師祭はじさいではコスプレ少女を乗せた『らき☆すた』御輿が集まったファンらに担がれて町中を練り歩いた」

 「他にも『クレヨンしんちゃん』の春日部市、『行け!稲中卓球部』のさいたま市南区など、埼玉が舞台となっている漫画・アニメは数多い。県は昨年、北海道大学観光学高等研究センターの山村高淑准教授ら6人の委員からなる『埼玉県アニメツーリズム検討委員会』を設置。観光資源としてのアニメの可能性に着目し、真剣に検討してきた。18の漫画・アニメとその舞台となっている県内自治体を紹介したパンフレット『埼玉県ゆかりのマンガ☆アニメMAP』も作成、配布した」

 「公式観光サイト『ちょこたび埼玉』の中に専門ページ『埼玉ちょ〜でぃーぷな観光協会』を設け、アニメツーリズム関連情報を日本語、英語、韓国語、中国語簡体字の4言語で発信している」

 「埼玉県の観光スポットを紹介するPRアニメを現在制作中で年度内に完成予定。キャラクターは公募した。県が出資する第3セクターが運営するアニメ投稿サイト『アニメど埼玉』などで公開する」

──全市町村ご当地キャラ70体を目標に掲げている。
 「ご当地キャラには各地域の魅力が集約される。一目で特徴が分かる。地元の人々に愛されることで観光の枠を超え、地域振興に貢献できる」

 「11月28日に羽生市が『ゆるキャラさみっとin羽生』を開く。滋賀県彦根市の『ひこにゃん』をはじめ、1都18県から計86体のゆるキャラが集まる。県内からは県の『コバトン』、羽生市の『ムジナもん』など38体が参加する」

──ご当地グルメの大会も開く。
 「11月21日に埼玉北部の加須市で『第7回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦』を開く。県内からは草加市の『草加小松菜せんべい汁』、久喜市の『梨入りカレーライス』など33品、さらに栃木から足利市の『ソースカツ丼』など4品、群馬から前橋市の『まえばしtonton汁』など3品の出品が決まっている。県内外から5万人の来場者を見込んでいる」

──他の都道府県と比べてかなり異質の観光戦略では。
 「県の強みと弱みをよく分析した結果だ」

【いなば・なおこ】
81年東大法学部卒、埼玉県入庁。農業部農業経済課、企画財政部企画調整課、春日部市派遣、工業技術センター、環境部みどり自然課を経て、08年総務部文書課長。10年4月から産業労働部観光課長。

【聞き手・江口英一】


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