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観光業界人インタビュー 第2589号≪2010年12月11日(土)発行≫掲載
著作権保護期間を70年に
宿泊施設は“良き”理解者


日本音楽著作権協会 理事長
菅原 瑞夫氏

──理事長ご就任の抱負をうかがいたい。
 「今年4月から一般社団法人に移行しました。実務面はそう変わりませんが、評議員会を廃止したため、理事会での決議事項が多く、責任が重くなっています。そのトップであるとの意識を忘れず、協会を運営していきたい。また、権利者の信託を受けて、旅館・ホテルさんを始めとする多くの利用者の皆さまから使用料をお支払いいただいていることを踏まえ、透明性の確保に努めていきます。著作権を取り巻く課題も少なくありませんが、1つ挙げるとすれば著作権の保護期間の延長です。現在は50年ですが、国際基準に合わせ、早期に70年に延長されるよう関係団体と協力して取り組む考えです」

──著作権使用料は総額どのくらいですか。
 「09年度で約1090億円。CDの売り上げ減に加え、テレビ局など放送分野からの使用料も減っており、前年度と比べマイナスとなっています。対して、動画サイトなどからの使用料は増えています」

──音楽の楽しみ方も変わってきていますね。
 「聴くと言う行為に関しては、レコードからカセットテープ、CDと移り変わり、今やインターネットで曲をダウンロードして聴く時代です。アナログ世代はとてもついていけません(笑)。唄うことについても、昔はせいぜいカラオケスナックでした。その後カラオケボックスが登場し、手軽に歌が唄えるようになりました。ネットの普及とカラオケボックスの登場は日常の音楽の楽しみ方を劇的に変えました」

──ネットが著作権に及ぼす影響は大きいですか。
 「まともに来ましたね(笑)。ネットと著作権は犬猿の仲といわれるほどです。ネット上に溢れる違法な音楽ファイルは、サービスプロバイダーに通知して削除していますが、削除した途端にまた違法配信されるという具合です。通信カラオケだけなら管理もしやすかったのですが、ネット社会ではそれがなかなか難しい。現在、動画サイト事業者とは包括許諾契約を結ぶ努力をしており、今後とも契約の相手を増やしていきたいと考えています」

──JASRACにとって、旅館・ホテルの存在はどんなものですか。
 「古くからのお付き合いであり、大変お世話になっています。カラオケや館内のBGM利用など、きちんとお手続きをしていただいております。旅館・ホテルさんが元気でいてくれないと困ります。私が静岡支部長の時代には周辺の温泉地によく足を運び、温泉を楽しむかたわら、旅館・ホテルさんとのコミュニケーションを図ってきました。著作権は目に見えないので、使用料を払っていただくことになかなか理解していただけずに苦労しましたが、旅館さんは決してそうではなかったですね」

──宿泊客の宴会の楽しみ方も変わっているようです。
 「団体旅行が主流の時は宴会後にカラオケボックスやクラブに行くケースも多く見られましたが、今はそんな時代ではないのでしょう。しかし、音楽は決してなくならないと思います。音楽を使った旅館の楽しみ方というのを考えていただきたい」

 「昨今、体験型旅行に対するニーズが高まっていますが、例えば社交ダンスをやる人にフロアを提供するとか。最近では親父バンドが流行っています。昔はやりたくてもできなかったが、大人になった今だからこそできるとして、バンドを組む人が増えています。この人たちをターゲットに、館内施設に少し手を加え『当旅館では演奏できます』とアピールしたらどうでしょうか。楽器を演奏し、温泉に入って、おいしい料理やお酒を楽しむ『大人の合宿』という切り口です。また、音響設備を整えたリスニングルームを設け、オーディオマニアにアピールする。設備投資もかかりますが、その旅館ならではの特長をもっと打ち出すべきではないでしょうか。素人考えと言われればそれまでですが、旅館経営にもっと音楽を生かしてほしいと願うばかりです」

──好きな音楽は。
 「クラシックやジャズ、ボサノバです。フルートも吹くので、仲間とスタジオを借りて演奏することもあります。旅行は大好きですが時間がなくてなかなか行けないのが残念です」

【すがわら・みつお】
1974年4月JASRAC入社。静岡支部長、送信部部長、業務本部副本部長、常任理事などを経て、07年10月から常務理事。10年9月29日理事長に就任。東京都出身、58歳。

【聞き手・内井高弘】


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