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観光業界人インタビュー 第2617号≪2011年7月16日(土)発行≫掲載
KNTの震災後の国内旅行事業
近畿日本ツーリスト(KNT) 国内旅行部長
山本 龍二氏
──東日本大震災で上期は環境が大きく変化した。
「年初から市場が活発だった上、東京ディズニーシーとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの10周年、九州新幹線の全線開業や東北新幹線『はやぶさ』のデビューなどから春休みやゴールデンウイーク(GW)の特需もありうると見ていた中、震災が起こった。震災後の旅行販売では、東北はもちろん東日本を中心に大きな打撃を受けた。ようやく国内旅行需要に動きが出てきつつあるが、原発事故の影響は大きい。例えば東京ディズニーリゾート商品はいまだ十分に立ち直ってない。一方で西日本方面商品は堅調だ。関西発九州商品は絶好調、中部発九州商品も夏以降、個人型商品を中心に好調になりつつある。団体は特にMICEが厳しい。今年力を入れていたスポーツイベントも、大型イベントの取り消しの影響を受けた。一方、教育旅行団体では、新型インフルエンザの時の教訓を生かして仕向け地の変更などを迅速に行い、当社取り扱いへの影響は最小限に抑えられた」
──下期の見込みと施策は。
「宿泊券単品では昨年並みに戻りつつある。経済の回復基調を考えれば全体に上向くと見ている。自動車業界などの輪番休業を含め休みの取り方が従来と異なってくるため、夏期需要の動きは読みにくい。ただしGWに顕著だった予約の直近化は起こるだろう。9月に3連休が2回あることで、夏期需要が分散する可能性もあり、9月が当社の下期取り扱いのカギを握るかもしれない。一般団体は10月以降戻ってくると見ている。医薬系のMICEなどが復活し、当社でもすでに受注している。京都団参も多くが秋に振り替えになった。スポーツ系はマラソン関連を中心に需要喚起に取り組んでいる」
「復興関連では、首都圏の職場旅行で東北に行こうという機運が出ている。東北方面以外への団体旅行でも、食事に東北の食材を使うなどする『BUY東北運動』のニーズが増えており、営業担当者も意識して提案している」
──「西日本から東日本へ」との動きづくりは難しいか。
「組織団体では会議を東北で行ったり、東北に支援に行ったりする動きもある。教育旅行団体では東北方面からの方面変更の希望もあるが、当社としては、全国の教育旅行担当者向けに7月に東北での現地研修を実施して問題のない状況を学んでもらい、東北への教育旅行の継続実施につなげたい」
「被災地域に対しては、東北仕入メイトセンターが他社に先駆けて『がんばろう東北宿泊プラン』を発売し、関係協力機関の皆さんからも高い評価をいただいた。他にも東北復興支援商品はかなりのボリュームで展開している。また支援と旅行需要喚起を目的に、日本旅行との共同プロジェクト『みんなの元気プロジェクト』を立ち上げ、東北の夏祭りを中心とした旅行商品を造成しており、仙台七夕まつりでは共同イベントも実施する。近旅連とは、当社の健康保険組合とのタイアップで当社社員が余暇旅行で東北に行くのを促進する助成制度などを設けた。近旅連東北支部連合会と、中部の関係協力施設、国内旅行部共同で、ご当地グルメイベントも実施する。国内旅行部としては、長期的な需要喚起につながる取り組みを率先して行う考えだ」
「東北は日本の四季を感じられる原風景が豊かで、温泉、食、文化も多彩だ。岩手・平泉の世界文化遺産登録も決まった。被災してもなお東北の魅力は変わらない。そういった東北のさまざまな資源を守る、また資源を生かして地元の地域経済を支えようとがんばっている関係協力施設を支えるためにも、旅行会社として精一杯送客に取り組みたい」
【やまもと・りゅうじ】
57年生まれ。80年関西学院大経済学部卒。団体旅行事業本部カンパニー中国四国営業本部長を経て、今年1月から現職。京都府出身。
【聞き手・小林茉莉】
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