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観光業界人インタビュー 第2622号≪2011年8月27日(土)発行≫掲載
誘客事業を柱の1つに
観光立県実現へ後押し
群馬県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長
市川 捷次氏
──群馬県旅館ホテル生活衛生同業組合は今期が役員改選期に当たり、5月17日開かれた総会で理事長に就任しました。課題は何でしょう。
「現在、群馬デスティネーションキャンペーン(DC)を実施している最中であり、まずは組合としてこれを成功させること。国民の群馬に対するイメージは低く、ある調査では最下位という惨めな結果だ。群馬DCを通じて知名度を少しでもアップし、観光客の増加につながればと思う」
──組合の活動については。
「理事長に就いて改めて定款を読み返してみたが、組合の目的が現実と乖かい離りしているような気がしてならない。『公衆衛生の向上と増進に資する』とあるが、設立当時と比べ、衛生管理の技術、会員の意識は格段に向上している。こと衛生面に関しては、当時問題視されたことのほとんどは解決しており、安全・安心は当たり前のこととなっている」
──確かに違和感を覚える。例えば第6条の「事業」なんかそうですね。
「『事業』の中に『過度の競争により、組合員が適正な衛生措置を講ずることが阻害され、または阻害される恐れがある場合における料金(販売価格)の制限』という項目があるが、価格競争が常態化している現在、組合として果たしてできるのかどうかという問題もある。時代は大きく変わっており、見直しも必要ではないか」
──組合の軸足を移すべきだと?
「所管官庁は厚生労働省であり、生活衛生を事業の中心に据えることは当然としても、約550の会員がまず考えることは、1人でも多くの客に来てほしいと言うこと。それに応える活動を行うことも大事ではないだろうか。つまり誘客事業だ。宿泊施設は客が泊まりにきてこそ成り立つ商売であり、組合として何らの手助けができれば、会員増にもつながってくるのではないだろうか」
──観光といえば国土交通省・観光庁の所管であり、組合が観光をメーンにするのはなかなか難しいとは思うが。
「もちろん、その問題は承知している。ただ、先般、理事長になって初めて正副理事長会議を開いたが、多くの理事が私と同じような考えを持っていることが分かった。組合の現状に疑問を持っている会員は少なくないと言うことだろう。県内最大の旅館・ホテルの団体として『観光立県・群馬』実現のために今何をやるべきか、だ。事務局にお願いし、法律上、どんな活動ができるのか、またどんな制約があるのかを調べてもらっている」
──そうした中、今年度の事業展開は。
「前年度とそう変わりはない。全旅連との協調事業として18事業、組合単独事業として11事業に取り組む。単独事業の中に、『行政機関、観光団体等の連絡調整による観光振興施策の推進』があるが、今後はこうした事業に力を入れていきたい」
「もちろん、従来の事業をおろそかにすることはない。衛生管理や感染症対策、金融対策などにも取り組む。ただ、私としてはできるかどうかは別として、定款の見直しを行い、良い形で若い人にバトンタッチできればと考えている。時代と環境の変化に対応を、と言うことだ」
──草津温泉旅館協同組合の理事長も務めていますが、草津の状況はいかがですか。
「東日本大震災の影響で草津も宿泊予約キャンセルが相次ぎ、かつてない大きな打撃を受けた。一時期は人影が全くなくなり、このまま草津は駄目になるのではないかと思ったほどだ。ただ、5月の大型連休を境に客足も戻りつつあり、底を脱した感がある」
──一方で、節電問題もありますね。
「計画停電の時ほどではないが、旅館経営、客商売にとっては頭の痛い問題だ。お客様は理解しているとはいえ、例えば旅館・ホテルが節電し、そして温泉街全体もどことなく暗ければ『来て良かった』とは思わないだろう。非日常を味わうために旅行に出るのであって、観光・温泉地が日常と変わりがなければ旅行に出かける意味がない。この震災を機に、非常時のサービスのあり方を考えるきっかけとしたい」
【いちかわ・しょうじ】
慶大中退。1968年ホテルニューオータニ入社。99年からホテル一井社長。草津温泉旅館協同組合理事長、東武旅連会長など兼職。群馬県出身、66歳。
【聞き手・内井高弘】
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