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観光業界人インタビュー 第2679号≪2012年11月3日(土)発行≫掲載
エースにはない目線で
新たな需要掘り起こす
JTBガイアレック社長
堀江 伸也氏
──JTBガイアレックとはどんな会社か。
「2009年10月に『ジェイティービーサンアンドサン』と『JTB地球倶楽部』が統合してできた、『体験』と『学び』をトータルプロデュースするグローバルなSIT特化会社だ。売上高は約100億円で、その70%を個人旅行商品造成のサンアンドサン事業部が占める。そのほか2つの事業を持ち、法人事業部が15%、海外留学を扱う地球倶楽部事業部が15%の割合だ」
──「サン&サン」ブランドの旅行はかつてスキーのイメージが強かったが。
「国内・海外スキー商品の販売は1990年の106億円をピークに下降線をたどっており、今はサンアンドサン事業部の扱いの2割程度の14億円だ。全体の4割が『きまま』という旅館・ホテルと航空機を組み合わせたプランで、これが基幹商品になってきた。JR付きも含めた宿泊プランが3割。残り1割は日帰りのバス旅やエンターテイメントのチケットなどだ」
──JTBの「エース」ブランドとの商品コンセプトの違いは。
「エースが主に方面別の商品構成で、どこに行きたいというお客さまのニーズにこたえる一方で、ガイアレックは目的を持ったお客さまへの対応にこだわっていく。温泉のパンフレットも、にごり湯や源泉掛け流しに入りたいという目的を先に示している。基本的にエース商品でまかなえない部分をやっていく」
「にごり湯の宿で面白いのは、栃木県・那須温泉の雲海閣。1泊食事なしで、料金が4700円から。安いからというよりも湯がいいから人気がある。こういった宿は、1泊2食の感覚を持っている普通の旅行会社では扱わないだろう」
──そのほか、ガイアレックならではの取り組みはあるか。
「町歩きの企画は得意分野だ。奈良は観光地としては活力があるが、宿泊者が少なく、泊まりはほとんどが京都に行ってしまう。そこで一昨年から、日本書紀や古事記、万葉集を題材に奈良を歩いてもらう宿泊プランを作っている。現地ではボランティアのガイドが無料で案内する。毎年、2千人ぐらいの参加があり、奈良の宿泊施設にも好評だ。今後のロングテール商品だ。1千人でも2千人でもいいので長いスパンで、奈良へのリピーターを少しずつ増やしていきたい」
「エースは、アンケートで80点以上の宿を多く使う。だから、我々は80点未満の宿も開発する。風呂が良いとか、少しでもいいところを見つけて、協定している旅館・ホテルに送客していく」
──旅行需要の開拓で力を入れていくのは。
「社内で議論されているのは、シニア層とローコストキャリア(LCC)への対応だ。5年前に団塊の世代の先頭が60歳になった時は、会社を退職する人はいても、すぐに旅行に行く事態にはならなかった。それから5年経って消費目的の中に必ず旅行が入っている。シニア層が一緒に旅行に行く人は誰か。どういう機会で旅行を探しているのか。ありとあらゆることを考え、潜在的需要を掘り起こしていく」
「一方のLCCは、乗れなかった場合どうするかとか、キャンセルで返金ができないといった、旅行会社が窓口になった場合にお客さまサービスの点で責任が負えないところがあるなど、対応が難しい点が多い。今は様子を見ているところだ」
──シニア層への対応として行うことは。
「パンフレットでは、シニアという言葉をあえて使わないようにする。シニア=年寄り、と捉えられ、自分たちは違うと敬遠される。そのような言葉を前面に出さなくても、旅館でも布団ではなくてベッドを用意するなど、内容をよく見てもらえれば、泊まりやすい宿だと理解できる。年配だけをアピールするのではなく、すべての人にやさしい旅行を作っていく」
──パートナーである旅館・ホテルとどう連携していく。
「ウィン・ウィンの関係で積極的に企画提案を進めていきたい。先日、京都の旅館に、修学旅行のオフシーズンに修学旅行と同条件で引き受け可能かと聞いてみた。食事も修学旅行と同等の内容でいいから、と。結果、喜んで受けるという施設が出てきた。そういう需要があってもいい。旅行会社は、旅館・ホテルが困っている時期を補うのが基本だ。オフ期の提案も積極的に行っていく」
【ほりえ・しんや】
【聞き手・板津昌義】
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