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観光業界人インタビュー 第2700号≪2013年4月20日(土)発行≫掲載
「錦帯橋」を世界遺産に
開港機に広域観光提案
山口県岩国市長
福田良彦氏
──山口県岩国市の観光スポットといえば、何といっても錦帯橋です。
「岩国市は2006年に1市7町が合併してできた。それぞれ魅力的な観光資源はあるが、中心となるのはやはり錦帯橋だろう。ここを核とした滞在型観光地となるのが課題だ。市にとって観光行政は大きな比重を占めており、トップセールスで岩国観光の魅力を発信しなければと考えている。昨年12月には念願の岩国錦帯橋空港が開港した。観光振興、経済の活性化、企業誘致、雇用の創出が期待できる。開港を機に、首都圏はじめ多方面にPR事業を積極的に展開していく」
──搭乗率は。
「予想を上回る利用となっている。開港1カ月は80%超えていた。それ以降は平均60%以上をキープしており、非常に好調である。各地に羽田と結ぶ路線が開設されているが、岩国路線は上位に入る搭乗率の高さだ」
──年間観光客数はどのくらいですか。
「12年で約335万人となっている。錦帯橋は約70万人だ。東日本大震災後は落ち込んだが、半年後には平均並みに戻った。空港開港後は数字が伸びてきている。これまでは九州や関西圏からのお客さまが多かったが、開港を機に、東京を中心に首都圏からのお客さまも来られるようになってきた。首都圏を視野に、広島や宮島に近いというメリットを生かした広域観光を提案し、受け入れていきたい。岩国を拠点にコンパスを回すと、島根の石見銀山なども入る。これら自治体との連携は今後密になってくるだろう」
──教育旅行の受け入れも積極的ですね。
「体験をテーマに、他では味わえないような旅行をしてもらう。昨年11月に都立清瀬高の修学旅行生約300人が体験学習にきた。プログラムは2〜3人ずつ民泊し、田舎料理を食べたり、川下りや茶積みの自然体験だ。2泊というわずかな滞在だが、『第2の故郷ができた』と感動し、お世話になったおじいちゃん、おばあちゃんと泣いていた。『社会人になったらまた来るよ』って。教育旅行の受け入れは地域の方の協力なくしてはできない。日頃やっていることをやっていただく。肩に力の入らない取り組みが長続きするコツだ」
──インバウンドの状況は。
「昨年の外国人観光客数は1万5300人だった。アジア、特に台湾、中国、韓国が多い。錦帯橋周辺には外国語表示看板や音声ガイダンスを設け、受け入れ態勢を整えている。米軍基地もあり、外国人対応は馴れていると思う。これからも積極的に受け入れる」
──錦帯橋以外ではどんな素材が。
「市内には5つの酒蔵があり、錦帯橋で鵜を楽しみながら地酒を飲むというコースが人気だ。岩国寿司という押し寿司もある。錦帯橋周辺には約3千本の桜があり、西日本屈指の名所と言われている。白蛇神社という立派な神社も建立された。巳年の今年、開運・金運の神の使いといわれるシロヘビにあやかりたいと、非常ににぎわっている。市民一人一人がおもてなしの気持ちを持って観光客を受け入れている。錦帯橋周辺に残る歴史ある町並みを守るため、景観計画をこのたび策定した。歴史文化あふれる岩国を地域の方と協力して守って生きたいと考えている」
「また、重要港湾である岩国港では飛鳥IIやぱしふぃっくびいなすといった豪華客船の誘致に力を入れており、私自身も船会社を回っている。クルーズは1回の集客数が多く魅力的だ。岩国はクルーズのイメージがないが、今後はよりアピールしていく」
──錦帯橋は世界遺産にならないのでしょうか。
「従来、世界遺産の定義はオリジナルのものが残っていることだった。だから石の橋で世界遺産はいくつもあるが、木の橋の世界遺産はない。木は腐るため新しい木で作り変える必要があり、それが世界遺産の基準に合わないとされた。錦帯橋は過去何度か架け替えているが、技術の継承の意味合いもある」
「しかし、3〜4年前に、イコモス(国際記念物遺跡会議)が新しい基準を作った。それが『技術の継承も世界遺産に値する』というものだ。錦帯橋はまさに合致しており、世界遺産の道が開けてきた。錦帯橋は海外からは絶大な評価を得ている。橋の専門家は『錦帯橋が世界遺産じゃないほうがおかしい』と言ってくれている。世界遺産実現に向け、市民一体となって取り組む」
【ふくだ・よしひこ】
法政大卒。市議会議員、県会議員、衆院議員を経て、08年2月市長初当選。12年1月再選。岩国市出身、42歳。
【聞き手・内井高弘】
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