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観光業界人インタビュー 第2712号≪2013年7月20日(土)発行≫掲載
国内サービス充実が使命
需要が起こるサイト作り
楽天トラベル社長
山本 考伸氏
──6月27日付で社長に就任。トリップアドバイザー日本法人の社長から楽天トラベル常務に転身されてからわずか4カ月だ。
「私自身が一番驚いている。楽天グループのスピード感を改めて感じた。トリップアドバイザーの日本法人代表兼アジアパシフィック地区プロダクト・マーケティング責任者と楽天トラベルの社長とでは、事業規模や社員数からいってもプレッシャーの高さが違う。社員や宿泊施設、利用者の期待に応えなければと思っている」
──世界一の旅行口コミサイトであるトリップアドバイザーのノウハウを楽天トラベルに導入するのか。
「トリップアドバイザーはフェイスブックやブッキングドットコム、アマゾンなどと並んでテクノロジーの開発力とその導入スピードが優れている。この部分での経験は生かせると思う」
──エクスペディアグループ(エクスペディア、ホテルズドットコム、トリップアドバイザーなど)やプライスライングループ(プライスラインドットコム、ブッキングドットコム、アゴダなど)を意識したグローバル展開の強化など新しく取り組むことは。
「グローバルも大事だが、国内サービスを良くしていくことが一番の使命だし、そこに時間を費やしている。宿泊施設と利用者が使いやすい機能を充実させていく」
──じゃらんnetと比べてサイトデザインが野暮ったいと言われている。
「7月4日にトップページ、施設一覧ページなどを変えてすっきりと見やすくした。国内サービスのサイトの開発スピードは今まで以上に速くしている」
──クチコミ機能は改良するのか。
「変える前に生かそうと思っている。宿泊クチコミでは量、質ともに世界でも有数のサイトだ。データマイニングでテーマを絞ったランキングなどを抽出して発表しても面白い」
「楽天トラベルには、利用者が投稿したクチコミと、宿側の返答の文章がある。宿自身が書いたPR文章を記載したウェブページもある。宿が利用者に直接メールできるRメールというサービスもある。双方向のコミュニケーションが整った宿泊サイトは世界的に見ると実は少ない。これは圧倒的な強みだと思う。自動販売機的な海外の宿泊サイトとの違いがここにある」
──楽天が年内をめどに、現在完全子会社となっている楽天トラベルを統合する。狙いは何か。
「何かが劇的に変わることはない。社内の人材の行き来とナレッジのシェアをより高めること、楽天市場と楽天トラベルが提供するサービスの相乗効果をより強化することの2点だ。利用者のクロスユースを加速させる」
──楽天トラベルは06年にANAと組んで、国内航空便と国内宿泊を利用者が自由に組み合わせて購入できる国内ダイナミックパッケージを実現させた。JRとの連携はできないのか。
「利用者の利便性を考えると実現できると良いサービスだと思う。努力を続けていきたい」
──岡武公士楽天トラベル前社長・楽天前執行役員は楽天顧問として残った。役割は。
「私と二人三脚で私の足りない部分を補っていただく。岡武顧問は楽天トラベルの前身である『旅の窓口』の時代から通算して17年間にわたり、このモデルをつくりあげてきた方。私にはない経験値をお持ちで、旅館・ホテルからの信頼も厚い。残っていただかないと困る。執行責任は私が持ちながらも、さまざまな局面でアドバイスとサポートをいただく」
──旅館・ホテルにメッセージを。
「楽天トラベルを『予約するのに便利なサイト』から『見ていると旅行に行きたくなるサイト』に進化させたい。楽天トラベルのコンテンツは、私たちだけで作っているのではない。宿がアップしている魅力的なコンテンツこそが差別化の要になっている。予約が起こるだけでなく、需要が起こるサイト作りをしていきたい。これからも皆さんのお力を貸して下さい」
【やまもと・たかのぶ】
99年、京都大学大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了、NTTドコモ入社。05年スタンフォード大学経営大学院MBA修了。オーバチュア(現ヤフーリスティング)を経て、06年エクスペディア入社。08年トリップアドバイザー異動。09年日本地区担当GM、10年日本・韓国地区担当GM、12年日本・韓国・アジアパシフィック地区担当バイスプレジデント。13年3月楽天入社、楽天トラベル常務執行役員。13年4月楽天執行役員。13年6月楽天トラベル代表取締役社長。38歳。
【聞き手・江口英一】
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