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観光業界人インタビュー 第2713号≪2013年7月27日(土)発行≫掲載
訪日2000万人時代の受け皿
主役は宿泊特化型ホテル
全日本シティホテル連盟会長
藤野 公孝氏
──6月の総会で会長に就任した。シティホテルを取り巻く環境をどう見ている。
「昨年までは『観光に行こう』とか『ビジネスをしよう』とかの目的を問わず人の動きは鈍かったが、今年に入ってから景気が上昇し、行動しようという人々の気持ちも高まってきた。人の動きが出てくると金の動き、情報の動きも出てくる。最悪は脱し、少しはいい環境になってきた」
──経営的な面では。
「会員の多くは明日つぶれてもおかしくない厳しい状況の中で必死に頑張っている。施設も老朽化したものが多い。そんな会員ホテルの隣に大規模チェーンホテルの真新しいのが建っているケースも少なくない。家族経営とか、近所の人に手伝ってもらいながら頑張っている会員ホテルを見ていると、『疾風に勁草を知る』、踏みつけられても簡単には枯れない道端の草のようなしぶとさを感じ心強く誇りに思う。しかし古い建物でも利用してくれる常連客に報いるためにもリニューアルは必要不可欠だ」
──会長としての抱負を聞きたい。
「一寸先は闇の状況だから、会員ホテルみんなに生き延びてもらうことが最大の使命だ。問題は融資。今は一番弱い企業として最悪の条件になっている。今後、中小企業庁、あるいは観光産業振興議員連盟を通じて中小企業支援対策としての融資を求めていきたい。融資条件としては長期、低利、固定。10年とは言わないが、最低でも3年は据え置きというものでないと、実際のリニューアルができない。JCHAだけではパンチ力がないので、旅館団体やほかの中小企業団体と協力して、訴えかけていきたい」
──「ビジネスホテル」というビジネスモデルは今後、生存できるだろうか。
「それは連盟に突きつけられた課題だ。ただ、これまでは出張してきたビジネスマンに泊まるところを提供する駅前のホテルという位置付けだった。今、ビジネスマンしか相手にしないビジネスホテルなら、完全に時代遅れ。ツーリストも対象としているのが実際であり、呼び名としては、エコノミーホテル、あるいは宿泊特化型ホテルと言った方がふさわしい。低料金の宿泊特化型ホテルはこれからの我が国の観光立国時代のニーズに最も合った宿泊施設の形態だ」
「JCHAという組織のキーワードは『独立系』と『宿泊特化』の二つ。しかし、あまり固執していると発展性がない。今後、会員のタイプの多様化にどう対応するのかが次のステップの問題だ」
──宿泊特化型が伸びるという根拠は。
「日本インバウンド観光が今後、1千万人、2千万人なった段階での一番の受け皿だからだ。小泉総理が2003年1月に訪日外客を倍増の1千万人にすると言って10年経っても、いまだに800万人台という情けない数字だが、観光ノービザ対象国の拡大やLCCの就航などで2千万人も夢ではなくなった」
「特にLCC就航拡大は最大の起爆剤で、今後アジアから多くの人が来る。今でも訪日客の4分の3を占めるが、これからの2千万人、3千万人時代は大半がアジアからの観光客になる。そうなった時、旅館に泊まるのももちろんいいが、宿泊料金が3千円とか5千円とかの清潔で低廉なホテルに泊まる人がほとんどだろう」
──JCHAの事業として力を入れるのは。
「融資問題やインバウンド対応、経営の効率化などがあるが、もう一つ、地域の人たちを巻き込んだ顧客サービスの提供も重要だ。かつては、入ってきたものは猫1匹でも外に出さないような考えでやってきた経営者も見られたがそれではだめだ。おいしいうどん屋が隣にある、あそこの民芸品をぜひ土産にとか宿泊客に教えてあげて、地域ぐるみで接遇するネットワークづくりが拡大すると素晴らしい。観光はこれから地域と共生、協働すべきだ。企業の利潤追求の延長線上で地域に対して何が貢献できるかという『社会的価値の創造』の発想でやると、地域の企業や団体も協働体制を求めてくる。そういうわけで地域と共に発展していくための『地域顧客委員会』を設立した。会員はみんな地元での肩書をたくさん持っているのだから、地域の人たちに声掛けをしてもらいたい。まさに『住んでよし、訪れてよし』の発想で、我々は地域の元気の源として町づくりの先頭に立って頑張らなければならない」
──NHK受信料の割引メリットもあって大規模ホテルの入会が増えている。
「会員の中には入会を喜ばない声もあるが、私は大規模ホテルもJCHAの大きな財産だと思う。大規模ホテルには宿泊特化型ホテルとは違う宿泊文化や大きいがゆえの悩み、問題などがあるはずで、それを組織として知らなくてもいいとは思っていない。大規模ホテルだけを集めた委員会を作るなどして、そのニーズにも対応していく」
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