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観光業界人インタビュー 第2780号≪2015年1月1日(木)発行≫掲載
外国人客今期8万人超
東京観光の楽しさ提供
はとバス社長
中村 靖氏
──就任して、まず取り組んだ仕事は。
「当社には『はがきチェック会議』というものがあり、ツアーに参加したお客さまの意見が書かれたはがきを600人分読んだ。ほとんどは『よかった』『いい思い出になった』など、お礼の言葉が多いのが印象的だった。ただ『はとバスにもかかわらず…(怒)』といった厳しい声もあった。さまざまなお客さまの声にしっかり応えていかなければと肝に銘じた」
「当社は都の路線バス運行の一部を受託しており、営業所全5カ所の視察と社員への訓示も行った。また、多くの取引先や株主さまへのあいさつも済ませた。『関係先がこんなに多いのか』というのが正直な感想だ」
──都職員としての経験を経営にどう生かしていくか。
「私は、知事本局で東京全体の計画づくりに携わってきた。今は2020年五輪・パラリンピックが決まり、それに向けて東京が大きく変わる時期で、東京という街を『オリンピック仕様』にして、世界一の都市にしようという過程だ。五輪を一過性のイベントにするのではなく、『きっかけ』にして東京のみならず、日本全体の発展につなげなければならない」
「五輪はスポーツイベントの場だけではなく、日本の技術のショールームに、さらに、日本の文化、ソフトのショールームにすべき。ソフトで言えば、はとバスの運転手、ガイドは一流だ。外国のお客さまにこのサービスを実感してもらい、それをきっかけに日本のいろいろなところを訪れてもらう。私もこれまでの経験を生かし、五輪後を見据えた商品などを考えていく」
──経営上の目標は。
「前の3カ年計画を作った時に比べると、今期の予算は10%増と上向いた計画になっている。まずは予算を達成するのが目標だ。前年の実績が良かったので、それを今後、維持していく。定期観光、企画旅行で年間120万人のお客さまを維持していく。収支は同じくらいを見込んでいる」
──インバウンド施策については。
「大きく伸ばす目標を立てている。外国人客は、前々期が約5万人弱、前期7万人弱。今期計画は7万7千人、おそらく8万人を超えるだろう。2020年は20万人を目指す。そのために体制を強化していく必要がある」
「英語と中国語のツアーをやっているが、両方とも伸びている。昨年10月に(インバウンドを主管する)『国際事業部』を立ち上げた。これまでは、インバウンド商品企画のペースが1年に1回程度だったので柔軟性に欠けていたが、新組織の立ち上げで、ニーズに沿った見直しができるようになった。これにはイスラム対応、ハラルも含まれる」
「中国とヨーロッパのお客さまは違う。アジアのお客さまの中でも、求めているものは微妙に違いがある。はとバスらしさというか、その違いに対応するきめ細かいサービスを行い、お客さまのニーズをグリップしていく(しっかりとらえていく)ことが大切。いろいろな国の人が東京観光を楽しめるシチュエーションを作っていく先兵としてやっていく」
──御社の課題は。
「景気や災害など、経営が外部環境に左右される。私たちの努力だけでは如何ともしがたい。もちろん商品を良くしていくことは大事なことだが、ベースとして安定した経営基盤を持たなければならない。(好不調の)波を緩和する必要がある。その一つが不動産事業だ。現在、品川の高層ビル開発を進めている。五輪前の2019年度に完成させる」
──逆に強みは。
「長年にわたり築かれた、お客さまの信頼に基づくブランドだ。『はとバス』を知らない人はいない。お客さま、取引先、業界、行政など、いろいろなところからの信頼が厚い。また、ブランドを支えているのは人材、商品の内容、企画力だと思う。運行、商品企画、運営、販売、全て自分たちでやっているところが強みだ」
──バス業界では乗務員不足が深刻だが、現状をどう見るか。御社の状況は。
「深刻化しつつあるという感じだ。当社は、観光分野は充足している。ネームがあるので他社よりは状況は良い。私たちが苦しくなる状況なら、業界全体が苦しくなっている。しかし、路線バス部門は流動が激しいので、現在は定数を若干下回っている。運転手の処遇を良くしていくことは一つの方策だろうが、絶対数が少なくなると処遇だけでは解決できないので、自社で育成していくことも将来の検討課題として考えなければならない」
【なかむら・やすし】
東大法卒。1981年東京都に入り、知事本局自治制度改革推進担当部長、産業労働局金融監理室長、交通局長、知事本局長などを歴任。昨年9月、はとバス社長に就任。60歳。
【聞き手・大城登志和】
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