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観光業界人インタビュー 第2809号≪2015年8月8日(土)発行≫掲載
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国内旅行減少をカバー
ANTA会員の支援へ
株式会社 全旅社長
中間 幹夫氏
──全国旅行業協会(ANTA)の事務受託会社である株式会社全旅。その社長に6月23日就任した。社長として何に力を入れる。
「今、国がインバウンド振興の旗を一生懸命振っているなか、大手旅行会社はインバウンド事業を強化しているが、ANTA会員の旅行会社もこれを見逃す手はない。先駆けて取り組んでいる会員もあるが、まだ少数だ。今後、訪日外国人旅行者が2千万人、3千万人になると、それではとても対応しきれない。5400社のANTA会員は国のインバウンド推進の大きな戦力になる。国内旅行が減少し、今後、国内旅行で食べていけなくなる。インバウンド事業に加わり、国内旅行の減少分をその売り上げでカバーしてほしい。そこで、ANTA会員を対象としたインバウンド推進の協議会的な組織を立ち上げたい。全旅がANTA会員の先頭に立っていく」
──具体的には。
「全国のANTA会員によるネットワーク組織で、10月の設立を目指している。ここにANTA本部をはじめ、観光庁、観光に熱心に取り組んでいる各県の自治体、そして、協力関係にある日本旅行にも入ってもらい、いろいろと知恵を拝借しながら、われわれがどうインバウンドを商売に結び付けていくかを考えていく。中小旅行会社であるANTA会員は、大手旅行会社と比較して組織力、資金力で劣っている。インバウンドに取り組みたくても、とっかかりがつかめないと悩んでいる会員も多い。インバウンド事業に関する知識やノウハウをネットワーク参加者の間で共有し、そういう人たちがインバウンド事業に参入できるようにもしていきたい」
──ANTA会員のインバウンド事業をどのように促進していくのか。
「例えば、鹿児島のANTA会員が、ある中国の旅行会社から中国人客の鹿児島での受け入れ事業を請け負っているのだが、その中国の旅行会社が行う東京への旅行の手配についてはまったく関知していない。東京での受け入れ事業は大手旅行会社の取り扱いになっているという場合がある。そうではなくて、会員同士がネットワークを結び、鹿児島の会員が東京で受け入れ事業を行っている別のANTA会員に話をつなぐ。話をつなぐだけでなく、そこには収受の関係がきちっとある。お互いが経済交流で結びつく、メリットのある強力なネットワーク組織を作り上げていきたい」
──ANTAや全旅では着地型観光「地旅」の推進も事業の大きな柱だ。
「地旅は『地方創生』につながる。今後、国内のお客さまもそうだが、外国のお客さまのニーズもどんどん多様化していく。日本にはショッピングや温泉ぐらいしか楽しみがないというようなことでは、すぐに飽きられてしまう。日本の北から南まで多種多様な着地型観光の商品を豊富に準備し、『国自体が一つの大きなエンターテインメントだ』と外国人に紹介できるぐらいにならないといけない」
──来年3月17日に鹿児島県でANTA主催の『国内観光活性化フォーラム』、翌18日に全旅主催の『地旅博覧会』が開かれる。共に2年ぶりの開催だ。
「県外から来た会員やお客さまに着地型旅行とは何かということを十分に知ってもらえる内容に仕上げたい。特に鹿児島での着地型観光モデルコースの情報発信を中心に構成する。動員目標数は1日目のフォーラムが千人、2日目の地旅博が地元の人を含めて7、8千人を想定している」
──目新しい企画は。
「B級グルメも着地型観光の大きなアピール要素になるので、現地のB級グルメの店を集めた『Show—1グルメグランプリ』というイベントを両日実施する。弁当は食べさせないというような思いで、参加者には鹿児島の地産地消の食材を温かいもので味わってもらえるようにする。鹿児島には黒豚や薩摩鶏、芋焼酎など食べ物や特産品が豊富。お茶の生産は全国2位だ。しかし、PR下手で、それがメジャーになっていない。来場者に『鹿児島は食べ物がおいしい』という認識を持ってもらうことで、鹿児島産の農産物の販売促進にも役立ちたい」
──ほかには。
「会場のスポーツアリーナの中では、鹿児島をはじめ全国の祭りを披露するイベントも行う。鹿児島の大島紬はとても有名だが、その売れ行きが悪い。ファッションショーの開催や実際に着てもらう体験コーナーの設置で、大島紬の良さも紹介していく」
──開催地の鹿児島は中間社長の地元だ。
「鹿児島県旅行業協同組合では、行政から支援をもらって6年間、『魅旅』(みたび)という名称で着地型観光に取り組んできた。次の地旅博は、その一つの集大成となるイベントだ。鹿児島県の観光課には辛抱強く育てていただいた。鹿児島に全国から人々を呼び込み、今まで支えてくれたことへのご恩返しをしたい」
【なかま・みきお】
【聞き手・板津昌義】
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