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観光業界人インタビュー 第2821号≪2015年11月14日(土)発行≫掲載
 
連載・観光で地方創生を⑪

地域伝統芸能活用センター会長
中村 徹氏

──地方創生と観光は結び付くものでしょうか。

 「1963年に観光基本法を作ったが、柱の一つに『観光による地域格差の是正』という言葉を使った。当時、観光がなければ生活が成り立たない地域があった。そういうところに観光振興していくのが必要との認識だ。地方創生は地方の活力をいま一度取り戻そうという考えであり、観光はその有力な手段となり得る。言葉は違うが考え方は同じ。昔からやってきたことだ(笑い)」

──地方の現状をどう見ていますか。

 「財政的に苦しく、人口も減ってきている。このままではいずれ立ち行かなくなると危機感を持っていた。政治はもっと地方に目を向けるべきであり、その意味では安倍首相が地方創生を言い出したのも必然だったのではないかと思う」

──地域伝統芸能活用センターはいまどんな活動をしていますか。

 「センターは私が運輸事務次官の時に作った。文字通り、地域に根付く伝統芸能を活用して活性化を図ろうというのが目的であり、地域の観光振興のお手伝いをすることが仕事だ」

──伝統芸能は観光資源に成り得る、と。

 「観光資源は自然の美しさや温泉などにもあるが、そこに住む人たちが大切にしている伝統や文化もまた大きな観光資源となる。文化のないところに観光の発展はあり得ない。また、文化や伝統は住む人がそれを守り、継承していくんだという強い意識があるかどうかが肝心だ」

──年1回、「日本の祭り」を開催しています。

 「今年は秋田県横手市で23回目となる祭典を開いた。このイベントは行政はじめ、市民の方々の協力がなければ成功しない。熱意が人を惹きつけ、感動を与える。観光とはそういうものだ。住んでる人たちがまちを、地域を守ろうという強い気持ちがあって、いろいろアイデアを出して活動するのが観光による地域創生の核心ではないか」

──比較的、地方都市での開催が多いですね。

 「大都市ではさまざまなイベント開かれており、その中でやっても埋没してしまう。横手とか、その前の成田とか、中堅都市の方がやりやすい。来年は長浜で開催する」

──外国人にとっても日本の祭りは魅力では?

 「団体旅行などの場合は祭りを組み込むのは難しいだろうが、個人旅行では祭りは選択肢の一つとなる。地方の祭りを見て、参加することは伝統文化に触れられ、住民と交流を深めることができる、とアピールしていくことも必要だ。地方創生にとって訪日外客は欠かせない存在になってくるだろう」

 「それと格安航空会社(LCC)の登場だ。今後、外国の若者が個人旅行で日本を観光する際、LCCを使う可能性が高い。地方空港への就航がさらに増えれば、利用もしやすくなる。新幹線が通らないところもカバーしており、競争力は十分にある」

──地方創生に取り組む地域にアドバイスをいただきたい。

 「行政と市民が一体となって取り組むことだ。また、国交省は地方局に観光部を設けているが、ここを活用というか、利用すべきだ。国を引っ張り込み、資金を引き出すぐらいの気構えで発展させていってほしい」


【なかむら・とおる】
 東大法卒、1958年運輸省(現国交省)入省。運輸事務次官、新東京国際空港公団総裁、日本観光協会(現日本観光振興協会)会長など歴任。2007年11月から現職。80歳。

【聞き手・内井高弘】


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