──オープン当初はものすごい人気だった東京スカイツリーだが、近年の入場者状況はどうか。 「開業1年目の2012年度の入場者数は、開業日の12年5月22日から13年3月末までの約10カ月間で554万人だった。13年度の1年間は619万人、14年度が531万人、15年度は470万人となる見込みで、減少傾向にあるが、開業当初に想定した数字よりは高い水準で推移しており順調だ」 ──今後の販売戦略を教えてほしい。 「来場者が開業当初よりも落ちているのは事実なので、早期に下げ止まりをして、どう増やしていくかが課題だ。当日券で入場するお客さまは雨が降ったり霧が出たりして景色が見えない日には減少してしまうが、修学旅行などの団体客やインバウンド客は天気が多少悪くても来てくれるので、収益を安定させるためにこの二つに力を入れたい」 ──インバウンド客の誘致策としては何を。 「鉄道、ホテル、旅行会社なども含めた東武グループとしてアジア圏の旅行博覧会に出展するなど、海外でのプロモーションを積極的に展開している。スカイツリー入場者のうちインバウンド客はいまや20%近い。訪日外国人旅行客は2千万人、3千万人と今後増えてくるので大きな集客ターゲットだ」 ──地域への経済波及効果が期待されている。 「地元墨田区の関係者の方々とは、開業以来、桜の時期に地域を巡るスタンプラリーや5月にキャラクターフェスティバルを実施するなど、商店街に人が流れるよういろいろな形で協力している」 「墨田区だけでなく、台東区、江東区を含めた下町エリアでの経済効果についても開業以前から取り組んできた。下町の活性化を目的として、この3区で09年に『下町文化創生協議会』を設立し、これまで名古屋、福岡、金沢などで共同のプロモーション活動や旅行会社に対する説明会を行ってきた」 ──下町エリアの活性化に向けた今後の展開は。 「今まではどちらかというとスカイツリーに来たお客さまにどう墨田区、あるいは台東区、江東区に足を運んでもらうかというところに力点があった。スカイツリーの集客力はまだ高いが、これからはスカイツリー単独で集客するというよりも、下町エリアという面で集客する仕組み作りに努力をしていきたい」 ──具体的な動きは。 「本格的にはこれから。墨田区には両国に江戸東京博物館や相撲の両国国技館があり、この秋には『すみだ北斎美術館』も開業する。食文化で言えば、向島の料亭街、相撲のちゃんこ鍋など。台東区には人気の観光地・浅草がある。観光客を呼び込めるコンテンツが豊富だ。ホテルでは、東武ホテルレバント東京が錦糸町に存在するし、スカイツリーのフレンドシップホテルとして浅草ビューホテルや第一ホテル両国、ホテルイースト21東京などもある」 「そういったところと地方へキャラバンに一緒に行って旅行会社に対して説明会をする。あるいは、下町エリアのコンテンツを載せたパンフレットや旅行商品を共同で作るなどの取り組みによって、面での集客を図りたい。それが地元に対する大きな貢献になる」 【さけみ・しげのり】 1978年4月、東武鉄道入社、同社レジャー事業本部部長、東武ホテルマネジメント代表取締役社長を歴任し、2015年6月から現職。61歳。