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観光業界人インタビュー 第2853号≪2016年7月16日(土)発行≫掲載
DMO促進と人材育成
国際機関との“連携”も
日本観光振興協会理事長
久保 成人氏
──観光庁長官時代、印象に残っていることは何でしょう。
「当時、インバウンドという言葉はそれほど普及していなかったように思う。就任した年にインバウンドが1千万人を超え、地域を含めた日本の観光に大きな刺激を与える出来事になったことが印象深い。太田昭宏国交相(当時)が『2千万人になると日本の風景が変わる』と言っておられたが、それが今現実となっている。(1千万人を超えた)3年ほど前には考えられなったことだ。変化のスピードが速い(笑い)」
──日観振に対し、どんなイメージを持っていましたか。
「オールジャパンの組織であり、いろんな観光分野を対象範囲とする唯一の民間組織と捉えていた。行政側としてはありがたく、かつ頼りがいのある存在だった。中に入ってみると、予想以上に人が少なく、この人数(約35人)で与えられた業務をきちんと、よくこなしているなと思った」
「前理事長の見並さんが業務の中身を充実、強化され、新たに観光アカデミー推進室やDMO推進室、国際交流推進室などを作った。会長からは『時代に合った組織体制になったので、この路線を継承してほしい』といわれた。おっしゃる通りであり、私なりに精一杯努力し、見並さんの取り組みを実のあるものにしていきたい」
──2016年度事業計画も決まっていますが、まず何をやりますか。
「ナショナルセンターとしての機能を果たすこと。個別の団体では対応が難しいことを日観振がやっていく。それはDMOの形成促進であり、人材育成であり、そして国際機関との連携だ。特にDMOは、取り組みに熱心なところについては人材育成も視野に入れ、積極的に支援、手助けしていく」
「『地域を巻き込んで、観光の要素を取り入れれば活性化につながる』と考えている人は多く、日観振への相談も増えている。DMOに対する関心は非常に強いと認識している。インバウンドや国内旅行活性化の鍵を握っているだけに、日観振としてはこれまで以上に力を入れていく。DMO推進室はそのための組織であることを理解していただきたい」
──台湾との関係は変わらず?
「行政としては動きにくい面もあり、民間主導でやる方がいい。その意味では日観振の果たす役割は大きい。従来から関係は密だが、一層深めたい。台湾からの観光客はリピーターがほとんどであり、いかに各地方へ行ってもらうか、今後の課題だ」
──日観振は観光立国推進協議会の事務局です。事業計画の中で「新たな観光事業を作りだす場として機能できるよう検討していく」とありますが。
「これまで政府への意見具申などを行ってきた。それも引き続き行うが、今後は民間側が行動計画をまとめ、活動していく。そのなかで、制度変更や支援が必要と判断すれば、その旨を政府に要望、要請することも検討する。さらに観光に関心を示すベンチャー企業などと情報交換の場を設け、会員企業・団体との仲介機能というか、触媒になれればとも考えている」
──ツーリズムEXPOジャパンについては。また、地方での開催をどう考えますか。
「今回はまさしくジャンプの年であり、実のあるイベントになるようJATAさんと力を合わせ成功させたい。地域活性化の観点からも地方での開催は意味のあることだと思う。集客も含め、一定の成果を上げなければならないため、開催地は決まってくると思うが、チャレンジすべきだ。そう遠くない時期に実現させたい」
──北海道観光振興機構など、広域観光推進組織との連携は。
「組織も充実してきている。日観振も支部を持っているが、支部自体でも各機構と情報交換や情報の共有化を図っていきたい。北海道や東北、中部、九州の各機構とは同じフロアに事務所を構えており、頻繁に連絡を取り合いたい」
──古美術の鑑賞、収集が趣味と聞いています。自宅に構えた「美術館」の館長さんでもありますが、盛況ですか?(笑い)。
「名刺も作って配っているが、あくまでもしゃれ(笑い)。日本や中国、韓国の陶磁器などに関心があり、それなりに収集している。美しさに惹かれる。文化・芸術は国の魅力であり、貴重な観光資源ともなる。もっと活用すべきだ。政府もそこに気づき、京都迎賓館などの一般開放などに踏み切った。とても素晴らしいことだと思う。趣味の話をすると長くなるが…」
──分かりました。ではこのへんで。
【くぼ・しげと】
京大法卒。1977年運輸省(現国土交通省)入省。鉄道局長、大臣官房長などを歴任し、2013年8月観光庁長官就任。2016年6月から現職。大阪市出身、62歳。
【聞き手・内井高弘】
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