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観光業界人インタビュー 第2854号≪2016年7月23日(土)発行≫掲載
「スピード」と「サービス」
二つのSで営業力を強化
名鉄観光サービス社長
日紫喜 俊久氏
──今年3月22日に社長に就任した。社長としての抱負を聞きたい。
「昨年度からスタートした中期経営計画で2020年に向けて事業の拡大と新たな基盤づくりを目指している。この計画では『安心・安全の徹底』『人財の育成』『取扱高の拡大』の三つを柱としている。なかでも私の最大の使命は、取扱高を伸ばし、財務基盤をより安定させることだ」
──取扱高の目標額は。
「旅行業の部分で1千億円の売り上げを目指す。今は900億円を少し超えているぐらい。今年度に950億円に増大し、中計3年目の来年度には1千億円まで持っていきたい」
──自社の強みはどこにあると考えるか。
「団体営業マンのフットワークの良さだ。営業マンは毎日いろいろなお客さまと会い、お客さまニーズをしっかりとつかんでいる。私は営業の現場で育てられてきた。企業の力は現場の力だと思っている。これからもどんどん現場に出向いていきたい」
──これまでの現場の経験を生かし、営業マンに指導していることは。
「二つのS、『スピード』と『サービス』を徹底させている。『巧遅は拙速に如かず』で、お客さまに言われたら、すぐ行動で返す。そして、お客さまの琴線に触れるサービスを行う。この二つのSによって、営業力を強化しようとしている」
「二つのSに加え、『ホウレンソウ』(報告、相談、連絡)と『ソーセージ』(創意工夫、整理整頓、時間管理)も常に言っている。特に、他社と争い、お客さまの心をつかむにはどれだけ創意工夫ができるかがカギになる。例えばAの地域で成功した企画をBの地域にアレンジして取り入れることができるよう情報交換をきちんとやらせている」
──今年度の販売戦略を教えてほしい。
「重点市場と位置づけているのは、教育・スポーツ、社会福祉協議会、MICE、官公庁、宗教など。今まで得意としきた分野をより一層伸ばしていく。とりわけ力を入れているのは、教育旅行と学校関連のスポーツの分野だ。教育・スポーツに特化した支店も作っている。4月から大会登録のオペレーションセンターも設けて、全国大会など大きな大会運営の品質向上を進めている」
──熊本地震で観光需要が落ち込んだ九州にはどう支援をしていくのか。
「国の交付金を活用した『九州ふっこう割』の商品を7月1日から発売した。さらに、九州応援のキャンペーンも来年1月から1年間展開する予定だ。これについては、プレキャンペーンという形で今年10月から前倒しで始めていきたい」
──インターネット販売の今年度の展開は。
「国内旅行については、今までスカイマークを中心に商品を展開していたが、ANA、JALやそれ以外のLCC(格安航空会社)も合わせてネット販売を強化していきたい」
──国の施策でもあるインバウンドは、今後さらに拡大が見込まれる市場だ。
「中部地区には龍の形をしている『昇龍道』がある。頭の富山県からしっぽの三重県までの地域にはバスやホテル、ロープウェーなど名鉄グループの企業がいくつもあるので、名鉄グループと力を合わせて昇龍道プロジェクトを盛り上げていきたい。そのためにインバウンド事業部にアジアを中心としたネイティブスタッフをたくさん入れている」
「台湾事務所も3月に開設した。上海に続いて2番目の海外事務所だ。台湾からは350万人のインバウンド客が日本に来ている。その市場は大変魅力的だ。教育旅行に関しては日本から台湾に送って、逆に向こうからも来てもらうという双方向の形を考えている。提携をしているランドオペレーターとうまく力を合わせて、取り扱いを伸ばしていきたい」
──協力会として旅館・ホテルの「名鉄観光協定旅館ホテル連盟(名旅連)」と、観光施設・土産物店などの「名鉄マーチ会」を有する。どう連携していく。
「名鉄観光は国内旅行を中心にずっと営業してきたが、名旅連や名鉄マーチ会の協力がなかったら今日までやっていけなかった。本当に感謝している」
「お客さまのニーズが多様化してきたし、旅行会社の展開もいろいろと変わってきている中で、今まで通りのやり方ではお互いになかなか伸びない。地域により一層密着して魅力ある旅行・宿泊商品を造成していこうとしているので、施設の皆さまには自分の施設が持っている良さをもっと磨き上げていただきたい」
──座右の銘があれば、教えてほしい。
「水の如しという『如水』の言葉が好き。何事も柔軟にやろうと思っている」
【ひしき・としひさ】
三重県出身。62歳。立命館大学経済学部を卒業し、1976年4月に名鉄観光サービス入社。名古屋に本社を置く同社の中で関西や中四国での営業に長く携わる。
【聞き手・板津昌義】
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