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観光業界人インタビュー 第2861号≪2016年9月17日(土)発行≫掲載
“CC”1万人時代を築く
観光列車は相乗効果生む
日本外航客船協会(JOPA)会長
山口 直彦氏
6月10日付で日本外航客船協会(JOPA)の会長に就任した山口直彦・商船三井客船社長は8月25日の就任会見で、クルーズ業界を取り巻く問題について所信を述べた。会見のもようを一問一答形式にした。
──クルーズの実態はどうか。
「国土交通省の調べによると、2015年のクルーズ人口(クルーズを利用した日本人乗客数)は前年比4.5%減の22万1千人となっている。外国船の配船数の減少、邦船のクルーズの行程が長かったことなどが影響したと思う。ただ、4年連続で20万人台は維持している。16年については、邦船は短期(ショートクルーズ)の商品供給が充実し、外国船は新たな日本発着のクルーズの登場もあり、クルーズ人口は増加に転じるだろう」
──乗船の中身も変わってきている?
「1990年代は研修や交流、修学旅行などの目的を持って、その舞台として船を利用するケースが多かったが、今はほぼ100%レジャー利用だ。船旅を楽しむ人が毎年20万人いるということ。日本社会も成熟化し『モノよりコト』がキーワードになるなか、クルーズが生活に合ってきたのではないか」
──クルーズコンサルタント(CC)の育成に熱心だ。
「JOPAの活動のなかでも大きな位置を占めている。クルーズ商品は旅行代理店という流通ルートで販売しており、利用者はそこでクルーズについて相談する。近年、クルーズ船は多様化しており、巨大な船から小さなブティックタイプのもの、帆船タイプ、リバーサイドクルーズなど多くの商品がある。お客さまのニーズと異なる間違った商品を紹介すると満足を与えられない。代理店の方々には商品の中身を理解し、正確な情報を提供してもらうのが重要だ。そのために力を入れているのがクルーズアドバイザー認定制度だ。講習受講者数は1万人を超え、約6千人がCCの資格を取得している。そのなかで抜きんでた知識を持ち、経験豊富で業界をリードしてもらう立場のクルーズマスターは60人ほどいる。数を積み重ね、全国で1万人時代を築きたい」
──クルーズの普及に向けどんな活動を。
「にっぽん丸(商船三井客船)、飛鳥Ⅱ(郵船クルーズ)、ぱしふぃっくびいなす(日本クルーズ客船)の3邦船の船内見学会は昨年、全国60の港で88回実施し、6千人を超える人が集まった。その他、クルーズキャンペーンや、クルーズの魅力をコンパクトにまとめたパンフレットも作っている。好評なので、今年度は国際フェリーのパンフも作る予定だ」
──JR九州の「ななつ星in九州」をはじめ、鉄道会社が観光列車の運行に力を入れている。クルーズへの影響も少なくないと思うが。
「個人的には相乗効果が生まれるのではないかと捉えている。例えば、行きは鉄道、帰りは船を利用する、いわゆる『レール&クルーズ』の需要は今後顕在化してくると思う」
──クルーズ船を利用した訪日外国人観光客も増えている。
「政府は3月に発表した『明日の日本を支える観光ビジョン』で、2020年に訪日クルーズ客を500万人にする方針を打ち出している。クルーズ振興に対するビジョン策定は非常に結構なことだ。ただ、邦船、定期旅客船などのことも忘れないでいただきたい。一部の港湾では外国の大型客船誘致に的を絞った取り組みが行われている。船の大きさや船籍にとらわれず、平等に扱ってほしい」
──外国船による日本発着クルーズが増えていることに対しては?
「クルーズの選択肢を増やしているという意味で、外国船が日本近海で運航されることはいいことだ。外国人客を乗せた大きな客船が日本の港に入ってくる姿は見る人に感動を与え、いつか乗ってみたいと思わせる効果もある。外国船の日本発着クルーズも就航当時と比べてずいぶんと中身も変わってきた。商品を見ると、邦船が長年かかって造り上げてきた商品にかなり近くなっている。邦船会社としては誇らしいし、少々複雑でもある(笑い)」
──外国の船社は会員になっているのか。
「外国資本の会社もJOPAの賛助会員になってもらっている。国内における安全問題や入出国に関する規制緩和などは共通の問題であり、一緒になってやれることはある」
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