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観光業界人インタビュー 第2866号≪2016年10月22日(土)発行≫掲載
観光研究と実務に役立つ
図書館として存在を発揮

観光文化情報センター長旅の図書館館長
久保田 美穂子氏


──「旅の図書館」は、1978年に「観光文化資料館」として東京の八重洲に開館した。

 「大阪万博の開催が70年。職場旅行に加えて家族旅行も盛んになってきた頃、テーマのある旅を応援する図書館として設立された。99年に現在の名称である、親しみやすい『旅の図書館』に変更した」

──2015年に休館。調査研究部門と共に南青山へ移転し、コンセプトを変えて今年10月3日にリニューアルオープンした。
 
 「開設当時とは環境が変わって、今は旅行の情報はインターネット上にもあふれている。私たち公益財団法人が運営する図書館の役割をあらためて考えて、観光の研究者や観光政策の立案、観光産業や観光地の経営や実務に関わっている人たちを主な利用者層とする『観光の研究と実務に役立つ図書館』を新たなコンセプトにした。観光立国へという大きな流れの中で専門性を高めて社会に貢献したい」

──所蔵規模が拡大し、分野の幅も広がった。

 「今まで図書館と調査研究部門は別々のビルで活動していて、調査研究部門は研究用に資料室を持っていた。このたびのリニューアルにあたっては、ガイドブックや地図、旅行エッセイなどは大幅に減らし、一方、資料室の専門図書や統計、調査研究報告書などを蔵書に加えて、所蔵図書数はこれまでの約3万5千冊から約6万冊に増えた。戦前の貴重な資料も整理し、公開性を高めた」

 「専門図書館として独自の図書分類を取り入れたのも、今回のリニューアルの大きな特徴だ。公共図書館や大学図書館では一般的に『日本十進分類法(NDC)』を用いているが、NDCでは『観光』は『産業』の第二次区分の『運輸・交通』の中に全部入ってしまう。そこで今回新たに、観光に特化した独自の『観光研究』分類を構築し、『財団コレクション』『基礎文献(NDC分類)』と併せて三つの分類方法を用いることにした」

──書架に隣接して、約100人を収容できるホールも設置した。

 「静かに閲覧利用されるのを待つ、受け身の図書館ではなく、多様な空間活用ができるのではないかと、2年ほど前からゲストと参加者が気軽にディスカッションする『たびとしょCafe』など、図書館に人が集まれる機会を設けてきた。情報や意見交換をして知恵が生まれる場所にしたい。図書館だが、にぎやかな方がいいと思っている」

──会議を図書館で行えば気分も変わる。

 「無機質な会議室よりも図書のある空間の方がリラックスでき、また豊かで創造的な考えができる。たくさんの背表紙を眺めていると、それぞれから著者の情熱が伝わってくるようで刺激を受ける。探しものはもちろん、探していないものにも出会える」

──コンセプトの変更に併せて「旅の図書館が選ぶ、一度は読みたい観光研究書&実務書100冊」選びにも取り組んだ。

 「仕事として観光に関わる方々へのヒントや手がかりになればと考え、10月発行の機関誌『観光文化』で100冊を発表した。なぜあの本が入っていないのかなどの意見が届いたり、議論を呼んだりすれば、そこからまた新しい知見が生まれるだろう。私たちらしい情報を発信していきたい」

──「観光文化情報センター」はどういった役割をする部門なのか。

 「当財団は12年の公益財団法人への移行を機に、より実践的で学術的な研究機関へ向けてさまざま取り組んできた。研究部門は今年の4月に文科省の学術研究機関の指定を受けている」

 「観光文化情報センターはこの4月に発足し、図書館の運営の他に、機関誌の編集、シンポジウムの企画、ホームページや観光研究・調査相談窓口などの運営を通じて、これまで以上に観光行政、観光産業、観光学術界の皆さんがつながる場を提供する。観光に関する研究・情報プラットフォームづくりを目指している」

【くぼた・みほこ】
長野県出身。88年、東京外国語大学ドイツ語学科卒業後、日本交通公社(現JTB)入社、89年に財団法人日本交通公社へ移籍。2013年10月から観光研究情報室長・旅の図書館長、今年4月1日から現職。

【聞き手・板津昌義】


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