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観光業界人インタビュー 第2913号≪2017年10月28日(土)発行≫掲載

豊の国千年ロマン観光圏事務局長
堤栄 一郎氏



──豊の国千年ロマン観光圏の立ち上げの背景は。

 「大分県では北部地域、県南地域、西部地域などのエリアごとに観光振興を図るため、それぞれの地域で観光圏整備法に基づく観光圏の登録を目指した。観光圏の基盤作りや広域での誘客事業を進める専門の組織の必要性が高まり、各市町村、観光協会を中心として、2010年に北部地域の別府市、中津市、宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市、日出町、姫島村の8市町村で構成する『豊の国千年ロマン観光圏』が、国土交通大臣から認定を受けて広域観光圏事業をスタートした」

──観光圏の活動は。
 
 「『千年の記憶が紐解く知られざる日本 千年ロマン時空の旅』をブランドコンセプトに、宇佐神宮、国東半島の歴史・文化を中心とした、ここでしかできない体験や地域に暮らす人々と交流できる体験型プログラムを重点的に作成し販売。圏域を周遊する着地型ツアーの販売を目指し、旅行業第2種を取得した。18年は、神仏習合発祥の地である宇佐神宮を中心として国東半島に広がった『六郷満山文化』が開山して1300年の年となる。『日本の神仏習合の発祥』の地として山岳宗教文化を紹介し、商品を販売していく」

──組織の目標は。

 「世界に通用するブランド観光地域を目指す。観光客、特に外国人が来ることで地域が潤う仕組みを完成させるのが目標。そして、外国人と地域の人が交流し、街全体で地域の人が案内している街の実現を目指す。そのために長期的、戦略的に事業を考えられる組織が必要。最初は行政主導で進めたが、行政の担当者が長くて3~4年ぐらいで代わってしまうため、今では行政と民間・地域との橋渡しとなる観光地域づくりマネージャーを中心に、地域と行政の意見をまとめた長期戦略にもとづき進めている。観光圏、観光協会、市役所で役割を分担。観光圏は主にブランディング、マーケティングとエリアとしてのプロモーションを担う」

──インバウンドに関する取り組みは。

 「ヨーロッパやオーストラリアを中心に旅行需要の拡大を図る。長期滞在しながら歴史や文化を体験する人たちをターゲットに、宇佐・国東半島ならではの体験型ツアーを提案する。ハイキングで国東半島を約10日間かけて巡るツアーはとても好調だ。また、ヨーロッパから国東半島に農泊を体験するために訪れる人が増えている。そういった人たちに提供するさまざまなプログラムを用意していきたい。観光圏では、ガイド付きのツアーや宇佐・国東半島を周遊する広域のツアーなど着地型ツアーを作成し来訪中の外国人へ販売し、地域活性化につなげる」

──観光圏を進める中で見えた課題や問題点は。

 「民間との連携不足と2次交通、安すぎる値段設定の改善の三つだ。行政間や観光協会との関係は強化したが、民間企業と地域の声を反映した事業を強化する。今までは宣伝が主体で、地域に金を落とすことにつながっていなかった。地域でどう観光消費され、素材をどう商品化するかなどを地域と一緒に取り組む。2次交通については、国東半島は特に弱いエリア。タクシー会社と連携して、ガイド付きや体験型をセットにした国東周遊プランなどを考えている。一方で、観光地の料金設定は正直安すぎると考えている。決して地域を安売りばかりしてはいけない。訪日外国人は、別府の観光統計では年間約40万人が訪れている。韓国からが一番多く、アジア圏が多い。別府は海外に安売りしてきた歴史がある。以前は、安くしてでも観光客数を増やそうとしたこともあったが、泊食分離やゲストハウス、民泊なども増える中、以前の仕組みが崩れ、宿ごとに戦略が異なってきている。別府温泉の共同湯は今でも100円で入れるところが多くある。価値を見定め、おもてなしに対して適正な対価をもらう。安売りしてきた観光から脱却し、地域に金を回す仕組みを作り上げなければならない」

──組織を継続していくには。

 「観光圏と観光協会が地域経営をする形で事業を組み立てていく。市町村の枠を超えて、地域活性化のために何をするかを行政と合意形成をした上で、それぞれの役割を決めて進めていかなければならない。私たちは観光地域づくりマネージャーとして、行政、地域、民間をつなぐ橋渡し役。DMOとして稼ぐというよりも、地域を稼がせる役を担っていく」

──運営の財源は。

 「財源は行政を中心に負担金を出して持続的に運営する合意形成ができている。以前に比べ持続的に運営できる予算として、約3倍の額の負担をお願いすることで合意した。中途半端に予算をつけて始めるなら、行わない方が良い。やるなら徹底的に行い、成果を上げなければならない。成果の指標は、来訪者満足度、再来訪意向、観光消費額、宿泊客数。現在は、訪れた人の満足度、再来訪意向の評価も高くなってきており、地域の人との滞在交流型観光がリピーターにつながっていると考えている」

──中・長期の計画や目標は。

 「観光案内所や宿泊施設で商品が売れる環境を作る。そのためにも、業務の改善や商品開発、販売網の整備を行う。また、ここにしかない歴史をテーマとした旅行商品を外国人観光客に向けて造成し、世界に発信していきたい」


【つつみ・えいいちろう】
大分大卒。2005年インテリア寝装の製造・販売会社入社。退社後、06年に別府市観光協会入社。10年から豊の国千年ロマン観光圏事務局で8市町村の連携事業の企画、実施を担当。17年4月から現職。

【聞き手・長木利通】


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