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観光業界人インタビュー 第2919号≪2017年12月9日(土)発行≫掲載
KNT-CTホールディングス事業戦略統括部顧問
梶田隆弘氏
──DMOへの取り組みは。
「KNT—CTホールディングス(KNT—CTHD)では、地域の活性化や魅力の発信の支援を、約70人の専任スタッフが地元のプレイヤーと共に取り組んでいる。グループ内では、クラブツーリズム(クラツー)が、各地域を巡るツアーや交流人口拡大に向けたユニークベニューの活用、地域ならではのお祭りイベントの実施などを提案している。自社の媒体を最大限に活用し、企画力、集客力など強みを生かした観光誘致のお手伝いをしている。ただ、取り組むからには目標数字を掲げるだけでなく、結果を出すことにもこだわっている。参加する観光客数だけでなく、経済効果などの結果もシビアに見ながら地域の課題の解決に取り組んでいる」
──DMOと地域の課題は。
「マーケティングの実施と消費額の低さが課題。日本のDMOの場合、行政があらかじめ予算を付けて映像作成やウェブの作成といった宣伝活動などを中心に実施している。作るだけの自己満足では結果に結びつかない。海外で成功しているDMOは、民間主体で徹底したマーケティングを元に運営されている。今ある地域の素材がどういうもので、外部から見てどんなポジションにあるかを正確に把握し、的確なターゲティングを行う必要がある。今は、多くのDMOがインバウンド拡大への取り組みを進め、必要性を語る人も多い。しかし、旅行消費額で見ると、訪日外国人の消費額は2016年が年間3兆7476億円だが、日本人の国内旅行消費額は20兆9547億円と5倍以上多い。まして、近くにいる日本人が興味を持たないところには外国人も来ないだろう。インバウンドも確かに大事だが、国内にもしっかりと目を向け、需要を喚起することが地域活性の近道となる。観光GDPを見ると12年をピークに落ちている。国内の旅行消費額を拡大するために人数を求められるが、安易に人数を求めると、安売りに走り単価が下がるケースが多い。客に安いものを食べさせ、経済効果を薄めると、結果的に地域が疲弊して労働者も減少し、雇用までも駄目になるだろう。観光客から見て、付加価値のあるその地域ならではの高単価のコンテンツを作り、売らなければならない。DMOを継続するためにも、予算取りのための報告や提案書作りを行う前に、調査などマーケティングを行い、行政、交通機関、地元企業などが協力して数年先まで見据えた目標設定をしてほしい。一方、旅行会社としても、団体から個人にシフトする流れにしっかりと対応していかなければならない。外国人においては、本物志向の人はたくさんいる。日本らしいメニューを作り、宿泊単価も上げていかなければならない。KNT—CTHDでは、地域や行政、DMOと連携して国内外に発信を進めるとともに、トップエンドの客を獲得して単価を上げる取り組みも進めていく」
──人材不足の問題が言われているが。
「自治体主導で行うより、長期的に考えても地域のプレイヤーが中心でなければならない。クラツーでは、地域のイベントを作る際にクラブツーリズムパートナーズ会員から、地域でリーダーを出している。地域の人が主体的に動き、地域をまとめることで初めて成り立つ。われわれとしても、地域の連携やメニュー作りの人的支援として、クラツー社員の派遣も行っている」
──今後、DMOが行うべきことは。
「地域の連携と文化財の活用だ。地域をまとめるには地元金融や商工会が鍵となる。地域の活性には観光だけでなく、物産もセット。商工会との連携も必要だ。事務局はそれらをまとめる役割が求められる。そして、文化財の活用だ。観光は、国宝や日本遺産など文化との結び付きが弱い。この魅力を外国人にも発信することで地域の魅力は高まる。文化財を『見せることよりも守って触れさせない』では、せっかくの価値も半減する。ヨーロッパでは、城に宿泊するなど、文化財の観光利用が進んでいる。日本でも、管理がされて破壊されない仕組み作りは必要。迎賓館や二条城、名城での文化イベントを進めるなど、日本の文化財を上手にメニュー化して新たなコンテンツを作ることが観光誘致の促進につながるだろう」
──今後の取り組みは。
「KNT—CTHDはクラツーをはじめ、グループ会社の他社に勝る企画力が強み。宿泊プランの場合でも、1泊だけの提案でなく、1カ月暮らすように旅ができるプランも積極的に進めている。地域での交流を組み込み、地域と共に滞在型のメニュー造成も進める。そのためにも、地元を案内するボランティアやコンシェルジュ機能などのおもてなしを強化しなければならない。地域と共に実証実験も繰り返しながら、人数や消費額の目標達成につなげていく。ビッグデータの活用もいいが、CRM(顧客管理)の活用も進める。クラツーと近畿日本ツーリストの会員やアンケートデータをドッキングして、顧客を中心とした地域活性化の事業戦略や誘客のプロセスも構築していきたい」
──活動のゴールは。
「地域経済を活性化すること。地域の人や経済、観光産業が元気になることを目指す。そのためにも、KNT—CTHDのリソースを最大限に活用する。特に、クラツーには地域を元気にできる素材や力があると確信している。会社立ち上げの原点に戻り、地域に貢献できる企業として、地域と共に歩んでいく」
【かじた・たかひろ】
1981年近畿日本ツーリスト入社。名古屋国内旅行センター支店長、KNT—CTHD執行役員を歴任、2017年6月から現職(クラブツーリズム特別顧問、近畿日本ツーリスト中部取締役兼任)
地域観光商品を予約できる「チカタビ」(左)とクラツーの地域応援旅「地域47の旅」(右)
【聞き手・長木利通】
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