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観光業界人インタビュー 第2920号≪2017年12月16日(土)発行≫掲載
世界遺産センターが開館
市内回遊できる環境作る
富士宮市長
須藤秀忠氏
──静岡県富士宮市の観光の魅力は。
「富士宮市は『美しさ』に囲まれたまち。美しい女神であるコノハナサクヤヒメを祀り全国1300余ある浅間神社の総本宮である『富士山本宮浅間大社』のほか、牧歌的な『朝霧高原』、森にたたずむ『田貫湖』『白糸ノ滝』など先人が守ってきた美しい自然がある。シティセールスでは、発信するテーマと素材の絞り込みを図っている。20代から30代の女性をターゲットに展開し、訪れた女性からの情報発信も狙っている。情報発信策として、昭文社が発行する『ことりっぷ』とタイアップ。『美』をテーマに富士宮版小冊子を1万部作成し、都内の大型書店で配布した。また、小冊子の内容に沿い、SNSで発信力のある人をモニターツアーで招待し、情報拡散を行ったりもした。今後は、自然をテーマにアウトドアへの展開もしていく」
──12月23日に開館する富士山世界遺産センターの見どころは。
「世界的に有名な建築家である坂茂氏の設計で、その形は世界中の人々を惹きつける魅力ある建築物だ。ライトアップされた姿も素晴らしく、世界遺産センターを中心とした町の夜景も演出していきたい。開業後は、富士山の文化的価値の調査や研究を深め、成果を広く伝えていく活動の中心的役割を担う存在であるとともに、富士宮市を『富士山信仰の中心地』『富士山観光の玄関口』として強く印象づける施設になるものと期待している」
──センターを生かしたまちづくりは。
「世界遺産センターの開館を契機に、にぎわいの創出と世界遺産にふさわしいまちづくりを進めるため『富士宮市世界遺産のまちづくり整備基本構想』を策定し、具現化を目指している。浅間大社にある『神田川ふれあい広場』では、水と緑の空間を創出した再整備、世界遺産センターの南側には、大型バスも利用できる駐車場を整備した。特に、神田川ふれあい広場から美しい川の流れ越しに見える富士山は絶景だ。今後も民間による富士宮の食文化を発信するブルワリーレストランの建設が予定され、富士宮駅前でも大型ホテルの建設が進む。世界遺産センターから浅間大社までのエリアを中心としたまちづくりを通じて、市内を回遊し楽しんでもらえる環境を整えていく」
──観光促進において抱える課題は。
「富士宮市は市域の半分が富士箱根伊豆国立公園に含まれる。富士山の南西麓に位置し、富士登山口などがある富士山観光の拠点となるなど、資産に恵まれている。国立公園は、訪日外国人利用者数が100万7千人(2013年数値・環境省調べ)と全国立公園の中でも第1位で、インバウンド対策についても先進的だ。私は観光誘客において、何よりトイレからおもてなしが必要だと思い整備を進めている。トイレへの温水洗浄便座の完備や案内所付きのトイレを整備し、気持ちよく観光してもらえる環境を用意する。一方で、既存施設の老朽化が進む建物や受け入れ態勢の課題、富士山自体の混雑緩和の必要性などの課題はある。山麓地域では、全国で認知される箱根や富士山北東麓には国内外から多くの来訪者が訪れているが、富士宮市内の朝霧高原や田貫湖は手付かずの自然が残るも、一部のアウトドア観光客に知られるだけで全国的に認知されていない」
「最近、富士河口湖町や富士急行などと県境をまたぎ『富士山西麓地域観光連絡会議』を立ち上げた。新幹線の停車駅である新富士駅から世界遺産センター行きの直通バスの設定など2次交通対策、朝霧高原の地域住民が中心となる農家民宿に取り組むなどの動きが出てきている」
──東京五輪への展望、期待は。
「とてもいい風が吹いている。国内の観光客が増えると思うし、特にインバウンドで富士山周辺には外国人は多く訪れるはずだ。五輪の前に19年にラグビーワールドカップ(W杯)がある。二つに共通するのは、長期間滞在。ラグビーW杯は2カ月弱の大会期間がある。滞在の間に富士山に一度は寄るだろうし、富士宮市を選んでもらえるようにしたい。また、ラグビーW杯で経験したノウハウは五輪にも生かせる。ハードとソフトのおもてなしを進めていく。ソフト面は、インバウンドに向けたデスティネーション開発や外国人が商店街を周遊できるようなウエルカムマップの作成、商店街やタクシードライバーを対象とした外国人との対話訓練を展開している。ハード面では、トイレ整備はもちろん、外国人案内所の立ち上げ、公衆無線LANなどの整備にも取り組んできている」
──今後の取り組みは。
「ラグビーW杯や五輪など追い風はあるが、一時的なブームにとらわれることなく、観光地作りを進めたい。浅間大社の参道軸、屋台村作り、ホテル誘致、サッカーやゴルフなどスポーツの施設整備と全国レベルの大会誘致も進めなければならない。今まで磨いてきた観光地が、どんなターゲットに響くのか、マーケティングからメインターゲットの選定、プロモーション活動への展開へとPDCAをまわせるようなDMO機能の構築が必要になるだろうし、対応していきたい。観光資源を地域の活性化につなげるためにも、『チーム富士宮』で取り組んでいく」
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