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観光業界人インタビュー 第2926号≪2018年2月10日(土)発行≫掲載
岩手県商工労働観光部観光課 三陸観光地域づくり担当特命課長
内城 仁氏
──さんりく基金立ち上げの背景は。
「三陸地域の産学官民の連携強化などを支援する『三陸地域総合研究センター』を母体に、『三陸・海の博覧会記念基金』も統合し、『さんりく基金』が設立された。設立当初から、地域振興のための調査研究や地域資源を生かした商品開発への助成などを行っていた。2016年4月に、三陸地域の魅力ある観光地域づくりをより強力に推進する組織としてさんりく基金の内部に三陸DMOセンターを立ち上げた」
──基金の取り組みは。
「主に『データの収集や分析』『観光人材の育成』『旅行商品やプログラム造成の支援』『地域における観光地域づくりの支援』の四つに取り組んでいる。マーケティングの一環として、観光に関する調査を平成28年度に行った。三陸沿岸の20カ所でアンケート調査を実施し、誰がどこで消費し、地域経済にどれだけ影響をもたらすのか、人の流れはどうなっているのかを調べた。沿岸は、県内からの人が多く、県外からはほとんど来ていない。県外では隣県の宮城県や青森県からの流入が多く、東京や大阪など大都市からは限定的。沿岸に行くまでの課題も見えた。特に大きい課題は、二次交通。沿岸部に来ての宿泊は少ない。ほとんどが日帰りだ。一方で再来訪の意向については、三陸の食、沿岸の景観に対する満足度は高く、再度訪れたいという人は多い。三陸地域の人に対する満足度も高い。おもてなしなどを生かし、長く三陸に滞在してもらえる仕組みを作っていきたい」
──DMOとしての組織の目標は。
「広い意味での三陸地域の活性化だ。これからは、復興の先までも見据え、人口が減少する中でも地域全体で交流人口を拡大して、地域が元気になるようにしなければならない。特に観光は大きい役割を期待されており、各市町村とコミュニケーションを取り、共に考えながら特定の観光地を単体でなく三陸をエリアとして売っていきたい」
──地域の課題は。
「盛岡や平泉など内陸部から2時間程度かかる沿岸部までいかに足を伸ばしてもらうかが課題。沿岸に行ってからの移動も、縦に長く、鉄道など公共交通機関が少なく不便だ。消費単価を見ても、宿泊費は2倍近くの開きがある。今は、交通手段と体験などのコンテンツをできるだけ結び付けて広く周遊してもらい、泊まっていただけるようにしたい。道路は、復興道路として縦軸と横軸の整備が進んでいる。完成すると三陸の中での移動もかなり短縮できる。鉄道は、震災で不通となっていた部分が19年に三陸鉄道として一本の路線でつながる予定。このほか、今年は宮古と北海道の室蘭がフェリーでつながる。クルーズ船の就航も増えてきており、インフラが変わることを契機に、国内外から誘客を図りたい。DMOとしては、地域で活動する市町村と連携し、後押しをしていく。各地域の取り組みとしては、宮古市は地域DMOを設立したが、その他の市町村は今後。DMOについて情報発信しながら、取り組みに関心を持ってもらえるようにしたい」
──インバウンドは増加しているのか。
「岩手県に来ている外国人観光客全体の中で三陸の割合は多くない。三陸だけでみるとかなり少ない。海外からのクルーズ船の寄港などをきっかけに、受け入れ環境整備を進めている。釜石では19年にラグビーワールドカップが開催される。このチャンスを取り込まなければならない」
──運営するための財源は。
「これも大きな課題。今は、地方創生交付金を大きな財源にしている。それも期限があり、その後も見据え、自力で稼ぐことも必要だ。他の地域も参考に、収入源についても考えなければならない。今は、外で売れる旅行商品を作り、ブラッシュアップしている。DMOの専門人材が、旅行商品造成の企画を行う人材の育成支援として『三陸観光プランナー養成塾』を年5回開催している。16年度は25人、17年度は20人を養成している。地域と共に稼ぐ仕組みを作り上げる」
──今後のDMOとしての取り組みは。
「まずはDMOを知っていただき、認知度を上げることだ。実施している活動のPRも必要。また、ラグビーワールドカップなども見据え、旅行商品や体験プログラムなどコンテンツも作っていく。DMOが稼ぐ以上に地域が稼げるように、官民が一体となり仕組みを作っていく。三陸沿岸には13の市町村があるが、今後も地域DMOの整備に向けて支援していかなければならない。盛岡と沿岸は距離があり、沿岸のエリアも広い。今後、三陸の4地区に置く観光コーディネーターとDMOが連携して、現場の窓口として地域をサポートする。現場を強化しながら取り組んでいきたい」
【うちじょう・ひとし】
1995年岩手県庁入庁。その後、県職員として総務、企画分野を中心に勤務し、2017年4月から現職。
【聞き手・長木利通】
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