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観光業界人インタビュー 第2931号≪2018年3月17日(土)発行≫掲載
予算、就任時の3倍に
知名度向上へPRさらに強化
岡山県知事
井原木 隆太氏
「晴れの国おかやま」をキャッチフレーズに観光振興に取り組む岡山県。伊原木隆太知事に観光への思いと県の施策を聞いた。
──2016年4〜6月に「晴れの国おかやまデスティネーションキャンペーン(DC)」、昨年4〜9月に「おかやまハレいろキャンペーン」(アフターDC)が開かれた。成果をどう捉えているか。
一言で言えば、「よかった」。岡山県は備前、備中、美作と、大きく三つの地域に分けられるが、DCでそれぞれ1割ずつぐらいお客さまが増え、アフターDCでも客数をほぼ維持できた。
岡山には、あまり知られていないが、満足度の高い観光地がたくさんある。たまたま何かのきっかけで来られて、「こんなにいい所とは知らなかった」と言う人が結構いらっしゃる。
きっかけがあるかないかが大きい。きっかけをつくるという意味でも、何年かに一度、このような取り組みが必要だと実感している。
──知事は教育と産業振興に力を入れていると聞く。県産業の中で、観光はどのような位置付けにあるか。
大変重要だと思っている。
ただ不思議なことに、多くの人が、さらに観光産業に従事している一部の人でさえ観光を重要な産業だと認識していない。
確かに、医療や食料生産と違い、なくなっても絶対困ることはないだろう。ただ、一つ言えるのは、観光は非常に規模が大きい産業だ。本県の場合、観光によってもたらされる経済効果は年間およそ1700億円。これは農林水産業よりも大きい。
農業が大事な産業だというのは皆さんご承知の通り。しかし、観光はそれよりも規模が大きいということを、われわれは事実としてしっかり認識しておかねばならない。
そして、規模に加えて伸びもいい。外国人観光客、俗に言うインバウンドが増えている。サイズが大きくて伸びている産業。これが大事でないわけがない。
普通、産業が発展すると、働く人の賃金水準が上がり、国際的な競争力がなくなってしまう。明治時代の日本を支えた繊維産業しかり、戦後の重工業しかり。
しかし観光はそうではない珍しい産業だ。ヨーロッパがいい例だ。われわれ自身もフランスやイタリア、スイスなどに行き、何十万とかかっても満足して帰ってくる。観光は、実は先進国向きなのだ。やらずにどうする、と言いたい。
──県が特に力を入れている観光の分野は。
フルーツとロケ誘致だ。フルーツは県外にどんどん売り出しているが、ぜひ、現地に来て食べてもらいたい。また違ったおいしさがあるはずだ。
ロケについては、ありがたいことに順調に増えている。岡山の特徴である晴れの日が多いことと、アクセスのよさが大きい。今後もしっかりPRして、さらに増やしていきたい。
──観光振興を進める上で課題は。
一つは知名度。いざ旅行に行こうといって、すぐに岡山を思い浮かべる人はそんなにいないはずだ。海外の人に至っては存在すらあまり知らない。これは問題だ。
観光全体が伸びている今がチャンスだ。どの業界もそうだが、伸びている時はシェアの変動が激しく、安定するとシェアが動かなくなる。
今、どれだけPRできるかだ。国内はもとより、日本への入り込みが伸びている国や地域にアピールすることが大事だと思う。
プロモーションについては、瀬戸内沿岸7県による「せとうちDMO」もでき、7県が仲良く頑張っていこうと、取り組んでいるところだ。特に海外のお客さまには、岡山だけに来るのは現実的ではないので、「瀬戸内に来て下さい」「中国地方に来て下さい」というプロモーションをするつもりだ。
──旅館・ホテルなど県内の観光関係者に要望があれば。
岡山に来た人に、「来てよかった」と思ってもらえるよう、サービスに磨きをかけていただきたい。皆さんは地域を元気にするフロントランナーだ。行政も一生懸命応援する。サービスにかける熱意、気合という点ではほかの県に負けないようにしたいので、ぜひお願いしたい。
5年前に知事に就任してから観光予算を毎年増やしており、今は就任時の約3倍になっている。総枠が増えない中で、一つの分野を一本調子で増やすことはなかなかできないのだが、観光に関してはどっと増やしている。
これは投資だと思っている。費用対効果が大きい分野が観光だ。増やしたからといって、もうこれで十分、ということではなく、まだまだ増やしたいと思っている。予算面でこれだけ気合が入っている知事はなかなかいないのではないか(笑い)。
──県外の人には。
派手なものはあまりないが、何気ない普通のご飯がおいしいとか、居心地がいいなどとよく言ってもらえる。これは岡山の特徴であり、われわれの誇りだ。
雨が降っている日の年間平均は日本全体がおよそ120日で、月にして4カ月間。これに対して岡山は90日、3カ月間だ。この1カ月の差は大きい。
「晴れの国」岡山にぜひお越しいただきたい。
【いばらぎ・りゅうた】
1966年7月29日生。東京大学工学部卒業後、外資系経営コンサルティング会社勤務を経て地元百貨店天満屋入社、1998年5月同社社長就任。2012年11月岡山県知事に就任し、現在2期目。岡山県出身、51歳。
【聞き手・森田淳】
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