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観光業界人インタビュー 第2934号≪2018年4月14日(土)発行≫掲載
外国人と修学旅行に力
財源確保へ入湯税上げ
山代温泉観光協会会長
萬谷 正幸氏
──北陸新幹線開業から今年で4年目となる。
「開業1〜2年目は首都圏や関東圏からそれまでの3倍となるような多くのお客さまが来てくれ、山代温泉の宿泊客は年間約80万人を超えた。しかし、3年目以降は若干勢いも衰え、昨年は約76万人となった。新幹線効果は少しずつ落ち着いてきたというのが率直なところだ。5年後、2023年の敦賀延伸で再びこのエリアが注目を集めるだろうが、それまで今の数字を維持しながら、しっかりとまちづくりや誘客対策をやっていく必要がある。危機感は非常に強い」
──誘客対策として考えていることは。
「インバウンドと修学旅行を新たなターゲットとしている。どちらもほとんど取り込めていない。インバウンドは現状、台湾と香港がほとんどで、6割を占めている。欧米は少なく、FITでぼちぼち入るぐらいだ。現状を踏まえると東南アジア、特にタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムあたりがこれからのターゲットになる。先ごろ、これら東南アジアのエージェントを招き、3泊4日のファムトリップを実施した。いずれにしろ、いまは宿泊客全体の5%程度にすぎず、これを1割まで伸ばしたい」
──修学旅行は扱っていない?
「山代温泉としてはスポーツ合宿などを含め、ほとんど手つかずだ。弱いといってもいい(笑い)。しかし、北陸新幹線開業で首都圏や関東圏からのアクセスが良くなり、金沢への修学旅行がやりやすくなってきた。JR東日本も誘致に本腰を入れると聞いており、足並みをそろえて修学旅行を取り込んでいきたい」
──金沢が中心になると思うが、ホテルに流れる心配はないか。
「シティホテルは一般客の受け入れに手いっぱいで修学旅行には積極的ではないという。ビジネスホテルは食事処(宴会場)の問題もあり、大人数は受け入れられない。県も増やしたいのだが、そういう事情もあって苦慮している。加賀温泉郷としても新たな市場であり、全体としては大歓迎だ。受け入れ態勢をしっかり整え、修学旅行先として選ばれるようにしていきたい」
──中学、高校、どちらが有望か。
「県は修学旅行の専任者を東京に置いており、セールスをかけているようだが、中学からの問い合わせが多いようだ。高校は距離も長く、北陸に持ってくるとしたら中学が妥当だろう。千葉や埼玉の学校が関心を示していると聞く」
──個人客に対する地域の魅力づくりも大事だ。
「山代温泉では、次のゴールを北陸新幹線敦賀開業の23年と定め、新中期ビジョン計画(16〜22年)に基づいたまち並み整備を進めている。おもてなし力のレベルアップ、歴史・伝統・温泉文化を生かした山代ブランドの発信、中心商店街の活性化・整備促進—など、さまざまな施策を打ち出している」
──山代に限らず、温泉街の悩みの種が空き店舗や廃業旅館の対策だ。
「温泉地全体のイメージ悪化につながりかねず、早急に手を打つ必要があるが、権利の問題もあってなかなか難しい。しかし、5年後を見据え、行政と一体となって整備していく」
──「あいうえおの郷」にほんご文化の森プロジェクトの話もある。
「山代温泉の中心部にあるKKR(国家公務員保養所)跡地の約6千坪の一部は観光客や市民の駐車場として利用されているが、これだけではもったいない。跡地を生かし『あいうえおの郷(仮称)』にする計画がある。現代の五十音図を作り上げた明覚上人(平安時代後期の天台宗の僧)は山代温泉にある薬王院温泉寺の中興の祖といわれ、あいうえおの郷はその上人をテーマにした新しい施設とする。広場や足湯、上人のテーマ館『あいうえお堂(仮称)』などを整備し、地元の憩いの場、新たな観光スポットとしたい」
──事業をやるには財源が必要だ。入湯税アップなどを考えているか。
「県や加賀市に頼ってばかりもいられない。自分たちでできることはやらなければ。そのため、自主財源として入湯税の引き上げをやりたい。宿泊客をはじめ皆さんの理解を得る必要があるが、50円程度を上乗せし、200円としたい。当面は敦賀延伸までの期間限定というか、臨時の徴収とする。それ以降については改めて考えていく。来年早々に実施できればいいと考えている」
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