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観光業界人インタビュー 第2938号≪2018年5月19日(土)発行≫掲載
びゅうトラベルサービス 地域・営業戦略室室長
竹内 禎治氏
──びゅうトラベルサービス(VTS)の地域創生の取り組みのきっかけは。
「JR東日本では、従来から鉄道の利用促進や新たな観光流動創造を目的として観光推進に取り組んでいたが、JR東日本グループのVTSとしても、行動指針として『地域への貢献・私たちは、旅とサービスを通じて地域の人々と文化を大切に守り、育て、地域の活性化に貢献します』を掲げ、旅行を通じて地域貢献に取り組んできた。昨今は、東日本大震災の被災地への観光からの復興支援やインバウンド需要の拡大に伴い、特に東北エリアでの地域創生への期待が大きい。また、2015年3月の北陸新幹線金沢延伸開業、16年3月の北海道新幹線新函館北斗延伸開業による新幹線ネットワークの拡大など以前にも増して事業展開の可能性が広がっている。16年度上期商品からは『びゅう』旅行商品造成業務がJR東日本から当社へ移管され、『TRAIN SUITE四季島』運行に向けた専門部署を有するなど、観光事業を担う旅行会社として地域創生事業を推進していく体制を固めている」
──地域創生への取り組みは。
「当社では5、6年前ごろから自治体などの助成金を活用したモニターツアーなどを実施してきた。17年4月から組織再編により『地域・営業戦略室』が発足し、より一層の地域創生の取り組みを目指している。観光素材の掘り起こしを行い、各地域が持つ歴史、文化、食などのさまざまな魅力を生かした最適な旅行商品(個人型旅行、添乗員付き団体旅行、インバウンド向け旅行、モニターツアー)の提案のほか、当社が運営する『大人の休日倶楽部 趣味の会』を活用し、地元の伝統産業や歴史・文化などのエキスパートが講師を務める『地域連携講座』と受講者を対象とした『講座旅行』を組み合わせた当社ならではの新しい提案も行っている。地域創生事業は、16年度、17年度とも約20件の事業に地域ごとに取り組んでいる。今後はJR東日本のグループ会社や自治体とより一層連携を強化し、さらなる地域創生に取り組む」
──地方の課題などは。
「地域の観光素材として定着している事例がまだ少ないことが挙げられる。なんとかしようという思いはあるが、なかなか人材が育成できていない点もある。もちろん自治体の体力もあるだろうが、VTSは足りない部分を補うなど、地方と一緒になり隠れた素材の掘り起こしなどを行っていく。また、自治体の予算の関係で単発で事業が終わることも多い。実施した事業を、お客さまのアンケートからのフィードバックなどから振り返り、次に継続していくことが大切だ。地域の観光振興、課題解決に向けて、VTSひいてはJR東日本グループとしての受け皿を活用しながら、連携の深度化を図っていきたい」
──地方が観光で成り立つために必要なことは。
「地域が自発的に観光振興に取り組むことが大事。JR東日本グループとして地域創生事業を展開するにあたっても、その点を踏まえた地域との連携を念頭に取り組んでいる。現在、デスティネーションキャンペーン(DC)、重点販売地域、重点プロモーション地域など地域の観光キャンペーンと連動し、地域とJR東日本グループが一体となって誘客施策を行っている。観光キャンペーンは、関係者が一体となって受け入れ体制やおもてなしを定着させ、継続的な取り組みを実施している。当社が手掛ける地域創生事業は、一時的な誘客施策だけでなく、観光素材の磨き上げや受け入れ体制を構築するために地域をフォローアップする施策だと考えて取り組んでいる」
──DMOの運営に参画する予定は。
「VTSというよりは、JR東日本グループとしての連携の可能性も検討していくことになる。実際にJRの支社やグループ会社がDMOのメンバーに参画している例もある。17年6月からJR東日本本社『営業部観光推進PT』やJR東日本東北・信越支社には『観光推進室』が発足し、地域との観光ビジョンを共有しながら長期的な戦略による誘客を進めるなどJR東日本グループ一体となって一層の地域創生に取り組む体制を整備した。当社は、JR東日本グループの中で、旅行業、観光推進を担う会社として役割を期待されている。特に個人型商品の造成については、各支社の観光開発担当者の持つ情報や地域への影響力は欠かせない。JR各支社やグループ会社同士の連携と共に、DMOとの連携を深めていくことは必要だと考えるが、現段階では必ずしもDMO運営への参画という形に捉われず、まずは地域の新しい観光資源を商品化するなど、地域創生の推進役として取り組んでいきたい」
──今後の取り組みは。
「17〜19年度の中期成長戦略の中で、五つのビジョン『私たちが具体的にやるべきこと』を共有し、成長領域の四つの柱を掲げて3カ年計画を実行している。『地域創生ビジネスの推進』はその一つの柱という重要な位置付けで、今後はJR各支社、グループ支社や自治体などとさらに連携を強化し、その地域の特性を生かしたいわゆる『レガシー』に残る施策を深めていく。具体的にはプロモーションはジェイアール東日本企画との連携、地域産品を使った地域活性化施策では、生活サービス事業に取り組む各グループ会社と連携ができる。またJR東日本グループの旅行会社ならではの『のってたのしい列車』などを活用した商品の提供も継続して行い、地域への誘客に努める。その他、当社の運営するびゅうプラザ、訪日旅行センターなども地域の情報発信拠点として積極的に活用していく」
──活動のゴールは。
「事業はボランティアではない。だからこそ響くものを作っていく。20年を目指して3カ年計画に基づく取り組みを進めているが、そこがゴールではない。当社が持つウェブ、店舗などさまざまなチャネルを生かし各グループ会社とも連携しながら地域と一体となり地道に取り組みを進めていく」
【たけうち・よしはる】
1999年JR東日本入社。JRグループパリ事務所、本社営業部宣伝グループなどを経て、2015年10月にVTSへ出向。17年7月から現職。
【聞き手・長木利通】
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